2015年夏にエイバルに加入して以降の乾を取材してきて、例え地元メディアが高い評価を与えた試合でも、できたプレーとできなかったプレーをしっかりと振り返り、次の試合に向けての課題を自らに課し、それをクリアすることを考える姿をずっと見てきた。
 
　カンプ・ノウでのミックスゾーン、もちろん笑顔があった。それでも、日本人初の快挙に浮かれる様子は見せず、乾は記者に次のように答えている。
 
「バルサから２点取ったからといって、他のチームからこれから点が取れるかと言えば違うし、そういうことではない。もちろん、点が取れたことは嬉しいことですけど、今日は今日というか、日が変わればぜんぜん違う出来というか、そういうふうに変わるので、そんなに一喜一憂していられない」
 
　バルサ相手に決めた２ゴールは、全世界に「INUI」の名を轟かせ、選手としての評価を大きく高めたことだけは間違いないし、スペイン国内ですでに高い評価を得ている乾の獲得に興味を示すビッグクラブが出てくるかもしれない。
 
　だが、永遠のサッカー小僧である乾には、世間の評価はそんなに関係ないのかもしれない。ただ純粋に昨日までの自分を超える選手へと成長すること、愛するエイバルを勝利に導くためのパフォーマンスを毎試合見せることが大事であり、それが自分をそして人々を笑顔にするのだと分かっている。
 
　だからこそ、カンプ・ノウで見せた快挙は「終わった話」と気持ちを切り替え、ヨーロッパというサッカーの最高の舞台で主役としての輝きを放つために、これからも永遠のサッカー小僧は走り続けていく。
 
取材・文：山本孔一

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