好調ホッフェンハイムの青年監督が実践してみせた「真の選手育成」

カテゴリ:ワールド

中野吉之伴

2017年02月09日

「チームのために」という言葉を隠れ蓑にしない青年指揮官。

まだ29歳。とても監督には見えない風貌だが、この青年はチームを率いること、選手を育てることの何たるかをしっかり理解している。 (C) Getty Images

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「選手の力を引き出すのが指導者の仕事」という、かのデットマール・クラマーさんの言葉を思い出した。
 
 それは、チャンスを活かしているのが、この日のテラッツィーノだけではないからだ。ホッフェンハイムはナーゲルスマンの監督就任後、途中出場の選手が14ものゴールを奪っている。これはリーグトップの数字だ。
 
「選手交代を84分まで引っ張らないのが、大きな秘訣のひとつだと思う。選手が出場する時間が後になればなるほど、その選手がゴールを挙げる可能性は少なくなる。選手を代えるのは、そうすることで試合の流れを良くするためだ。時間稼ぎのためだけではない」
 
『ビルト』紙のインタビューにこう答えていたナーゲルスマンの言葉には、ただ頷くしかない。
 
 サッカーは、上手い選手をただ適材適所に並べれば勝てるというスポーツではない。そして選手の育成とは、マニュアル通りに管理することではない。誰だってピッチに立ちたいと願っている。その思いは、「勝負の世界だから」という割り切りだけで整理できるものではないのだ。
 
 それぞれの選手を、それぞれのペースで目的意識を見誤らないように導き続けていくためには、指導者の人心掌握が必要不可欠である。
 
 そのためには、人間性という曖昧でホンワカしたものではなく、選手一人ひとりと真摯に向かい合おうとするリスペクトの精神と、それぞれを適切な成長に導くための論理的な説得力と起用法が必要だ。
 
「チームにとって大事な存在だ」と口にするならば、それに見合う場を提供することもまた非常に重要なのだ。「チームのために」という言葉を隠れ蓑にしない。それこそが今、ホッフェンハイムが上位にいる何よりの理由ではないだろうか。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/ドイツ・フライブルク在住の指導者。2009年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの研修を経て、フライブルガーFCでU-16やU-18の監督、FCアウゲンのU-19でヘッドコーチなどを歴任。2016-17シーズンからFCアウゲンのU-15で指揮を執る。1977年7月27日生まれ、秋田県出身。
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