「柴崎の移籍報道」は日本とスペインで温度差が…

カテゴリ:移籍情報

工藤拓

2017年02月01日

柴崎はラス・パルマスに「キープ」されている状態だった。

ラス・パルマスは今冬にヘセ(左)とハリロビッチ(右)を獲得。EU圏外枠が空いていたが、柴崎は契約してもらなかった。

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 また現地では1月26日に、ラス・パルマスのミゲル・アンヘル・ラミレス会長が獲得交渉中の選手について具体的に説明。しかし、柴崎についての言及は以下の一言のみだった。
 
「いち選手の加入の噂を受けて、日本のテレビ局が島に来るようだ。興味を引く選手かどうかはすぐに分かる」
 
 こうした情報を総合する限り、今回の移籍交渉は売り込みをかけていた柴崎側に対して、ラス・パルマスが契約する可能性を仄めかしながら、結局は“キープ”していただけだったのだろう。
 
 そして、ラス・パルマスがそうした曖昧な態度を見せれば、当然ながら柴崎側も契約に至らない場合のことを考えていたはずだ。表向きにはラス・パルマス1本で交渉を進めているように見せながらも、実は並行して他の移籍先も探していたということだろう。
 
 結局、日本のメディアは連日に渡って動向を追い続けた末、ラス・パルマスと柴崎の関係者に一杯食わされることになったわけだ。
 
 サッカー界の交渉事においては、こうした情報のコントロールは極めて重要である。
 
 先述したラス・パルマスのラミレス会長は、断念したカレリとトレドの獲得交渉について、「メディアに名前が出ると選手の値段が上がり、他のクラブも注目してしまう。冬の移籍市場が開く前、ファンを落胆させないでくれと言ったのに」と過熱する移籍報道に足を引っ張られたことを嘆いていた。
 
 とはいえ、そういうラミレス会長も先日、契約延長交渉中のキケ・セティエン監督が要求してきた年俸額をメディアにリーク。世論の反感を煽ることで間接的に値下げを迫るという姑息な手を使っていた。
 
 しかも使ったメディアがクラブのオフィシャルラジオでは、やり方があからさま過ぎる。結果的にはセティエンの信頼を失い、逆に交渉は難しくなってしまった。いわば自分で自分の首を絞めた格好だ。
 
 ラス・パルマスのラミレス会長は、柴崎の獲得交渉こそ上手くメディアを煙に巻いたが、セティエン監督の契約延長交渉に関する情報コントロールでは失敗したと言っていいだろう。
 
文:工藤拓
 
【著者プロフィール】
1980年、東京都生まれ。桐光学園高、早稲田大学文学部卒。三浦知良に憧れて幼稚園からボールを蹴りはじめ、TVで欧州サッカー観戦三昧の日々を送った大学時代からフットボールライターを志す。その後EURO2004、W杯ドイツ大会の現地観戦を経て、2006年よりバルセロナへ移住。現在は様々な媒体に執筆している。
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