本人いわく岡崎の言葉で「吹っ切れた」。
試合に出られない時期、乾はベンチやスタンドからポジションを争うライバルたちと自分を客観的に分析した。自分には何が足りず、何が他より優れているのか――。
結論は、乾の本来の持ち味とは決して言えない、守備とバランス面だった。
比較対象はベベだ。当初はレギュラーに定着していたポルトガル人アタッカーは、攻撃面で大きなポテンシャルを秘めているものの、守備面での貢献と運動量が少なかった。
この点に気付いた乾は、ポジションを奪うために、練習からとにかく走り、守備でも貢献する姿勢をさらに強く押し出すようになる。メンディリバル監督が再び乾を先発に指名するまで、さしたる時間はかからなかった。
一方、攻撃面におけるポイントも“走り”だ。一時期はクロスに縛られていた乾が吹っ切れるきっかけになったのは、ブンデスリーガ時代の盟友、岡崎慎司との会話だった。乾は言う。
「岡ちゃんに『最近、上がりが少ないけど、あまり行くなと言われてるの?』と聞かれて。『いや、行けてないだけ』と返したら、『俺はあまり気にせず、何も考えずに走っている。そしたらチャンピンズ・リーグでも点が取れたよ』とアドバイスをくれた。それで自分も何も考えずに走ろうと思って。吹っ切れたのかなと」
守備面でハードワークをこなし、攻撃面では監督が求めるクロスに極端に縛られることなく、岡崎のようにスペースへと何度も走りこむ感覚—―。斜めのクロスボールに対して裏に抜け出してベディングで記録したビルバオ戦のアシストは、まさにその賜物だろう。
リーガでの、エイバルでの激しい競争の日々は、「新しい乾」を創り出そうとしている。
文:豊福晋
【著者プロフィール】
1979年、福岡県生まれ。2001年のミラノ留学を経て、フリーで取材・執筆活動を開始。イタリア、スコットランドと拠点を移し、09年夏からはスペインのバルセロナに在住。リーガ・エスパニョーラを中心に、4か国語を操る語学力を活かして欧州フットボールシーンを幅広く、ディープに掘り下げている。独自の視点から紡ぐ、軽妙でいて深みのある筆致に定評がある。
結論は、乾の本来の持ち味とは決して言えない、守備とバランス面だった。
比較対象はベベだ。当初はレギュラーに定着していたポルトガル人アタッカーは、攻撃面で大きなポテンシャルを秘めているものの、守備面での貢献と運動量が少なかった。
この点に気付いた乾は、ポジションを奪うために、練習からとにかく走り、守備でも貢献する姿勢をさらに強く押し出すようになる。メンディリバル監督が再び乾を先発に指名するまで、さしたる時間はかからなかった。
一方、攻撃面におけるポイントも“走り”だ。一時期はクロスに縛られていた乾が吹っ切れるきっかけになったのは、ブンデスリーガ時代の盟友、岡崎慎司との会話だった。乾は言う。
「岡ちゃんに『最近、上がりが少ないけど、あまり行くなと言われてるの?』と聞かれて。『いや、行けてないだけ』と返したら、『俺はあまり気にせず、何も考えずに走っている。そしたらチャンピンズ・リーグでも点が取れたよ』とアドバイスをくれた。それで自分も何も考えずに走ろうと思って。吹っ切れたのかなと」
守備面でハードワークをこなし、攻撃面では監督が求めるクロスに極端に縛られることなく、岡崎のようにスペースへと何度も走りこむ感覚—―。斜めのクロスボールに対して裏に抜け出してベディングで記録したビルバオ戦のアシストは、まさにその賜物だろう。
リーガでの、エイバルでの激しい競争の日々は、「新しい乾」を創り出そうとしている。
文:豊福晋
【著者プロフィール】
1979年、福岡県生まれ。2001年のミラノ留学を経て、フリーで取材・執筆活動を開始。イタリア、スコットランドと拠点を移し、09年夏からはスペインのバルセロナに在住。リーガ・エスパニョーラを中心に、4か国語を操る語学力を活かして欧州フットボールシーンを幅広く、ディープに掘り下げている。独自の視点から紡ぐ、軽妙でいて深みのある筆致に定評がある。