ユース年代最強と謳われる守護神、大迫敬介の格別

カテゴリ:高校・ユース・その他

川原 崇(高校サッカーダイジェスト)

2016年11月06日

理想像はシュマイケルではなく、現代最強のドイツ人GK

目を真っ赤に腫らして勝利を噛み締める。C大阪戦では2本のPK阻止だけでなく、随所で好守が光った。写真:川原崇(高校サッカーダイジェスト)

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 悲運に見舞われたのは、代表合宿合流直前の9月24日だった。プレミアリーグWESTのヴィッセル神戸U-18戦での出来事だ。
 
「何回かゴールキックを蹴っているなかで、おかしいなと。試合が終わって病院で診てもらったら軽い肉離れでした。遠征は辞退せざるを得ませんでしたね」
 
 復帰まではおよそ1か月を要した。歴史を塗り替えた仲間たちを横目に見ながら、感情を抑えきれない自分がいたという。
 
「すごく悔しかった。世界大会の切符を獲って、アジアで初めて優勝して。あそこにいたかったし、同年の若原(智哉/京都サンガU-18)もメンバーに入ってましたから。気持ちの切り替えは簡単じゃなかったですけど、ワールドカップのピッチには絶対に立つぞという想いを外さずに取り組んできた。あそこでゴールを守るのが僕の新しい目標なんです。今日は代表スタッフの方も見にきていたので、PKではありましたけど、少しはアピールできたんじゃないかと思います」
 
 微妙な変化に気づいていたのが沢田監督だ。「相当に悔しかったと思うんですけど、怪我から復帰してから、またひとまわり伸びたんじゃないかな。精神的にもそうだし、練習のところで、プレーの幅が広がったように感じます」と、17歳の進化に目を細める。
 
 無論、目立ったのはPKブロックだけではない。3バックの後方でリベロ然と振る舞い、正確なスロー&キックで攻撃の起点となった。圧巻だったのが72分のビッグセーブだ。至近距離から放たれた敵FWのフリーヘッダーを左手一本で弾き返した。1週間前の3回戦・ヴァンフォーレ甲府U-18戦でも、先制した直後の大ピンチを鮮やかに切り抜けたが、ここぞの局面での集中力と勝負強さがピカイチだ。
 
「瞬発力には自信があるというか、身体を投げ出してのセーブが得意なんです」
 
 そう聞いて思わず、「シュマイケルみたいだよね」と口走ってしまった。優しい大迫は「そうですかね」と笑っていたが、「あれ、古かった?」とすかさず訊くと、「うーん、少し」と(正直者だ)。理想像はやはり、現代最強のドイツ人GKだった。
 
「海外だとノイアーですかね。とにかく守備範囲が広くて、ディフェンスラインの背後をケアするところとか、すごく参考になります。とくにサンフレの場合は足下(の技術)が求められるんで。僕はまだまだ。もっと磨いていかないとです」
 
 広島ユースを4度目のJユースカップ優勝に導き、首位を走るプレミアリーグWESTとの2冠を達成するのか。4年後の東京五輪で主力となるだろう「2017 U-20日本代表」で、第1GKの座を射止めるのか。そして次に男泣きするのは、はたしていかなる歓喜の瞬間か──。
 
 日進月歩の進化を続ける、大迫敬介。これまた特大の期待をかけたくなる大器だ。
 
 
取材・文:川原崇(高校サッカーダイジェスト)
 
 
 
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