レバンテ戦で、タケはついに得点を決め、マン・オブ・ザ・マッチにも輝いた。しかし、この遅すぎる表彰は、癒えぬ傷をより深く抉るようにも見えた。能力がないために結果が出せないならまだしも、タケのようにポテンシャルはあるのに結果が伴わないという状況は、本人にとってもファンにとっても、無力感を倍増させるからだ。

　今のタケは、本来の役割以上のものを１人で背負い込み、時には個人の限界値を超えた無理を自分に強いてプレーしている。決して隠れることなく、果敢に挑戦し続けている。しかし、チームの不調という逆風が、彼のプレーをゴールに繋がる前に打ち消してきた。彼を苦しめているのは才能の欠如ではなく、あまりに巨大なフラストレーションだった。

　しかしレバンテ戦のタケは、そのフラストレーションを責任感へと昇華させていた。３日前のコパ・デル・レイのエルデンセ戦で90分フル出場し、疲労の色が濃いゲデスや故障明けのオジャルサバルがコンディションに不安を抱える中、彼は迷わずチームをその背中に背負った。

　基本ポジションこそ右サイドだが、この日のタケは自由奔放だった。神出鬼没に中央へ切り込み、相手の守備ブロックを崩した。

　立ち上がりからキレキレだった。７分には右から斜めに切り込んでバイタルエリアを横断。18分にはCKのクリアボールを拾って右足で強烈なシュートを放った。22分にはパスが通れば相手GKと１対１という裏への抜け出しを狙ったが、マヌ・サンチェスに間一髪でカットされた。その直後、 オジャルサバルへ完璧なスルーパスを供給。30分にはパブロ・マリンに絶妙なパスを送った。

　そしてアディショナルタイムにその執念がついに実を結んだ。ゲデスのクロスに飛び込んだタケのヘディング弾。DFに当たってコースが変わったボールを叩き込んだその一撃は、2008―09シーズンのチャンピオンズリーグ決勝（対マンチェスター・ユナイテッド戦。バルセロナが２－０で勝利）でリオネル・メッシが見せた「伝説のヘディング」を彷彿とさせる、高い跳躍からのゴールだった。
 

　ゴール後、タケはサポーターに謝罪のジェスチャーを送ったが、そんなことをする必要はなかった。何度倒されても立ち上がり、挑み続ける者には、結果が出なくても「免罪符」が与えられる。それこそが、タケがソシエダで築き上げてきた信頼の証なのだ。

　後半もタケの躍動は続いた。78分のカットインからの決定的なシュートは、元ソシエダ所属のライアンのスーパーセーブに阻まれ、87分の完璧なクロスはオジャルサバルが仕留めきれなかった。結果として、タケが最高レベルのプレーを見せても、ソシエダは勝利を掴むことができなかった。

　しかし、一筋の光はある。新監督ペッレグリーノ・マタラッツォの到着だ。 彼が標榜するサッカーは日本代表と戦術的な親和性を感じさせる。この未知数の指揮官の下で、タケはより中央寄りの位置でプレーするかもしれない。新体制への移行が、タケの真価を解き放つ夜明けとなるのか。その行方に熱い視線が注がれている。

取材・文●ミケル・レカルデ（ノティシアス・デ・ギプスコア）
翻訳●下村正幸

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