ジダンは、その独特なフェイントと繊細なボールタッチによって守備者のタイミングを外し、まるで自らの周囲に時空の歪みを作り出すかのようにプレーする唯一無二のタレントだった。アシストと比べてゴールはそれほど多くないが、98年のフランスW杯決勝での2発をはじめ、歴史的な得点が印象深い。トッティは、ファンタジスタの活躍の場がどんどん少なくなっていった00年代、そして10年代に至ってもなお「偽9番」という新境地を開くことで第一線で生き延びた“最後のファンタジスタ”のひとりだ。ストライカーとして振る舞いながらも、プレーの端々に観る者を驚かせようという遊び心が滲み出ていた。