中村が一気に注目を集めることとなったのが、２年連続で得点王とアシスト王のダブル受賞という史上初の快挙を成し遂げた明治大時代。その才能を開花させるきっかけとなったのがポジション変更だった。

「高校１年生まではボランチをやっていて、それからはフォワードでプレーしていました。大学に入って初めてサイドハーフをやるようになったのですが、３年生になってまたフォワードに戻ったのが、ターニングポイントになったと思います。あとは怪我から復帰したら、なぜかいきなり足が速くなっていました（笑）。特別なトレーニングをしたわけではないですし、理由は分からないのですが、それも大きかったです。

　もともとパスが好きで、魅力を感じていたのですが、大学時代の恩師である栗田大輔監督から『もっとこわい選手になるためにはゴールも必要だ』と言われて、それからポジションの変更もあって、得点数が増えてきました。あとは動き出しについても、こだわるように言われ続けていたのでそれが今にも生きています。でも自分としてはアシストも同じぐらい嬉しいですし、両方を大事にしていきたいです」

　また、大学時代にゴールを量産できた要因は「チームメイトたちのおかげ。あくまでチームがあっての自分」だと強調する。その言葉から分かるように、当時から変わらず大事にしているのが献身性だ。

「決して１人でできるようなことではないと思っていますし、仲間に感謝です。大学時代に１番感じたのは、献身的に守備をしたり、走っていると、そういう試合では必ずボールがこぼれてきて、点を決められているということです。自分が意識しているのはチームのためにやるべきことをやる、それと自分の特長を出すこと。前者はとても大事ですが、それだけになり、自分の良さを出せないまま、試合が終わってしまうのは違うと思います。そこのバランスはすごく大事にしています」
 

　選手としての理想像は、先述のように「ゴールとアシストができる選手」。その部分を日々追求している。

「自分の強みは動き出しです。あとは最後のところでシュートなのかパスなのかを判断できるのも自分の良さだと思っています。コンタクトプレーになると、ほぼ負けてしまうというか、現状では勝てない確率が高いので、ポジショニングや動き出しのタイミングを意識して、そういう状況にいかにさせないかは、つねに考えています。

　海外の選手のプレーを参考にしたりもしますよ。特定の選手に絞らず、型にはまらないように意識しています。例えば、（キリアン・）エムバペの動き出しやスピード、（リオネル・）メッシやネイマールのこういうプレーがいいなとか、（クリスティアーノ・）ロナウドのこういうシュートが上手いなとかそんな感じです。参考にならないレベルの方ばかりですが（笑）。でも何より広島の選手たちはクオリティが本当に高いので、映像を見るより日々のトレーニングの中で彼らとプレーできる今の環境はありがたいなと思っています」

　最後に今後の目標を力強く語ってくれた。意識するのは大卒１年目から広島で活躍した先輩の姿だ。

「まずは今季、公式戦２桁得点です。１年１年が勝負だと思っているので、毎日を大切にしていきたいです。また、満田誠選手（現：ガンバ大阪）を超えなければいけないと思い、広島にきました。（満田が広島で１年目につけた）39番を背負っていて憧れもあります。そんな目標とする選手が通ってきたルートを進んで、追い越していきたいです」

取材・文●中川翼（サッカーダイジェストWeb編集部）

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