アンへリーニョに危険なクロスを入れられたシーンがあったとは言え、ローマ戦の毎熊は守備でも合格点。ローマの左サイドのキーマン、アンへリーニョとのマッチアップに毎熊は「やっぱり良い選手でした。僕は中もケアしてから（アンへリーニョが立つ外へ）行かないといけなかったので、クロスを上げさせてしまうシーンが何回かありました。そこは気になってたんですが、後半は修正できて、自分たちの時間を作れた。そこで点を取れたのが大きかったです」と語った。

　試合終了直後、全国紙のAZ番記者は「今日の毎熊はAZの中で最も良かった選手の一人だった」と唸っていた。毎熊と4バックを組む仲間たちの活躍も光っている。とりわけ毎熊の真横でプレーするワウト・フースは現在売り出し中の20歳。ローマ戦でも披露したように、チャンスを防いだ直後のガッツポーズは彼のトレードマークになりつつある。ローマに勝った後、毎熊が真っ先に抱き合ったのがフースだった。

　AZの4バックの強みは、CBだけでなく両サイドバックもヘディングが強く、ローマがスクランブルを仕掛けてCBマッツ・フンメルスが前線に上がってきても、苦もなくロングボールを跳ね返すことができること。AZはアヤックス戦（2-0）、ユトレヒト戦（0-0）、ローマ戦(1-0)と3試合連続のクリーンシートを完成した。

「組織的に守れています。試合前のプラン通りに守れている。そこは分析するスタッフ陣、それを実行する選手たちのバランスがあってのこと。お互いが力を発揮しているからこそ、守れていると思います」
 

　AZは20位から一気に14位に浮上。逆にローマは14位から21位に落ちた。ELグループフェイズは残り1節。ここまでの戦いをマルテンス監督は「AZは強豪ばかりと対戦することになり、組み合わせに恵まれなかったが、それでもここまで勝点11を稼ぐことができた」と振り返ったうえで、毎熊の成長をこう称えた。

「シーズン序盤、毎熊は週2回の連戦に慣れてなかった。それはJリーグで経験しなかったことだから仕方のないこと。しかし、彼は瞬く間にこのペースにアジャストした。それは当然のこと。毎熊にはそれだけのクオリティーが備わっているのだから」

　ELグループフェイズ第2節のアスレティック・ビルバオ戦（0-2）ではニコ・ウイリアムズに、第3節のトッテナム戦（1-2）ではマイキー・ムーアの個の力に翻弄された毎熊だったが、それももうはるか昔のことのように感じられる。むしろ今、毎熊のほうが個の力で上回っていることが、ELの舞台で増えているのだから。

取材・文●中田 徹

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