「現在だけでなく未来の監督でもありたい」と意欲を見せるが……
インザーギは、昨シーズンにミランの監督を務めた兄フィリッポ同様ピアチェンツァの育成部門で育った。下部リーグへのレンタルを経て1998-99シーズンに22歳でセリエAにデビュー。翌年移籍したラツィオで通算10シーズンを過ごして2010年に引退した後は、6シーズンにわたって育成部門で指導者を務めてきた。
アッリエービ(U-17)から監督キャリアをスタートし、13-14シーズン途中にプリマベーラ監督に昇格すると、同カテゴリーのコッパ・イタリアを2度制覇した。リーグ戦でも14-15シーズンにはファイナルラウンドに進出。決勝で敗北し、惜しくもスクデットを逃したものの、ユースレベルでは際立った成功を収めてきた。
戦術的には、4-3-3を基本としながら相手や状況に応じて3バックも含めた複数のシステムを使い分ける柔軟性も持っている。
トップチーム初采配となったパレルモ戦では、ピオーリ時代の4-3-3をそのまま継承しながらも、最終ラインにはサンティアゴ・ジェンティレッティ、ミラン・ビシェバツという比較的展開力のあるCBを起用。従来のアグレッシブなプレスからのショートカウンター狙いから、ややチームの重心を下げつつよりビルドアップ志向の強いスタイルにシフトしつつある印象だ。
インザーギは就任会見で、
「現在だけでなく未来の監督でもありたいと思っている。これからの7試合がその答えを出してくれるはず」
と語り、来シーズンの続投への意欲を見せた。デビュー戦の勝利は、そこに向けた第一歩となる可能性を持っている。
しかしその一方で、ラツィオは3月末から、すでに来シーズンのミハイロビッチ招聘に向けて動き出しており、ミランでスタッフを務めた5人もセットで移ってくる方向で話し合いが進んでいる、という報道も流れている。
ミハイロビッチは選手時代、6シーズンをラツィオで過ごし、ロベルト・マンチーニらとともに99-00シーズンのスクデット獲得に大きな貢献を果たした。今でもローマに自宅があるなど、ラツィオとはつながりを持ち続けている。
現役時代からゴール裏との関係も良好であり、クラブとの対立関係を緩和する緩衝材的な存在になることが期待されるなど、監督就任に向けたポジティブな材料は少なくない。サッカーのスタイル的にも、現在のラツィオと同じ4-3-3を基本としているなど、チームに継続性を保証できる志向を持っている。
監督としてのキャリアと経験を考えれば、来シーズンに関してはシモーネ・インザーギよりもミハイロビッチに指揮権が委ねられる可能性が高そうだ。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
片野道郎/1962年生まれ、仙台市出身。95年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させる。『ワールドサッカーダイジェスト』では、現役監督のロベルト・ロッシ氏とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博している。
アッリエービ(U-17)から監督キャリアをスタートし、13-14シーズン途中にプリマベーラ監督に昇格すると、同カテゴリーのコッパ・イタリアを2度制覇した。リーグ戦でも14-15シーズンにはファイナルラウンドに進出。決勝で敗北し、惜しくもスクデットを逃したものの、ユースレベルでは際立った成功を収めてきた。
戦術的には、4-3-3を基本としながら相手や状況に応じて3バックも含めた複数のシステムを使い分ける柔軟性も持っている。
トップチーム初采配となったパレルモ戦では、ピオーリ時代の4-3-3をそのまま継承しながらも、最終ラインにはサンティアゴ・ジェンティレッティ、ミラン・ビシェバツという比較的展開力のあるCBを起用。従来のアグレッシブなプレスからのショートカウンター狙いから、ややチームの重心を下げつつよりビルドアップ志向の強いスタイルにシフトしつつある印象だ。
インザーギは就任会見で、
「現在だけでなく未来の監督でもありたいと思っている。これからの7試合がその答えを出してくれるはず」
と語り、来シーズンの続投への意欲を見せた。デビュー戦の勝利は、そこに向けた第一歩となる可能性を持っている。
しかしその一方で、ラツィオは3月末から、すでに来シーズンのミハイロビッチ招聘に向けて動き出しており、ミランでスタッフを務めた5人もセットで移ってくる方向で話し合いが進んでいる、という報道も流れている。
ミハイロビッチは選手時代、6シーズンをラツィオで過ごし、ロベルト・マンチーニらとともに99-00シーズンのスクデット獲得に大きな貢献を果たした。今でもローマに自宅があるなど、ラツィオとはつながりを持ち続けている。
現役時代からゴール裏との関係も良好であり、クラブとの対立関係を緩和する緩衝材的な存在になることが期待されるなど、監督就任に向けたポジティブな材料は少なくない。サッカーのスタイル的にも、現在のラツィオと同じ4-3-3を基本としているなど、チームに継続性を保証できる志向を持っている。
監督としてのキャリアと経験を考えれば、来シーズンに関してはシモーネ・インザーギよりもミハイロビッチに指揮権が委ねられる可能性が高そうだ。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
片野道郎/1962年生まれ、仙台市出身。95年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させる。『ワールドサッカーダイジェスト』では、現役監督のロベルト・ロッシ氏とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博している。