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マドリーで躍動するベリンガムに感じるドルトムント時代との“違い”。重鎮コンビの影響は大きい【現地発コラム】

カテゴリ:連載・コラム

中野吉之伴

2023年12月16日

「別次元から来たかのようなパスでプレーする」

 レアル・マドリーというチームでベリンガムは様々なことをものすごい速さで吸収しているわけだが、その背景としてチームにルカ・モドリッチやトニ・クロースという熟練の選手がいる影響はとても大きいはずだ。

 モドリッチとクロースは一時代と比べたら出場機会は減ってきている。シーズン序盤は世代交代、システム変更の関係でベンチを温める時期もあった。でもその存在感、影響力はなお健在だ。

 このウニオン戦でもモドリッチはスタメン出場、そして1点リードを許したマドリーは後半頭からクロースを投入。重鎮コンビによるゲームメイクは円熟味をさらに増しているようだ。円を描くように動きながら離れては寄せ、寄せては離れて、気がつくとフリーでボールを引き出している。ボールが二人を経由することで、流れがどんどん滑らかになっていく。

 母国ドイツの地で、ウニオンファンからも、試合前のメンバー発表でクロースの名前が読み上げられた時に少なくはない拍手があった。

「クロースはまるで心拍数20くらいの落ち着きで別次元から来たかのようなパスでプレーする。全てがトップレベルだ」

 そう称賛していたのは、同僚のドイツ代表DFアントニオ・リューディガーだ。この日、決勝ゴールを決めたダニ・セバジョスは「トニーは僕にとってこのクラブの象徴」と話していたことがある。
 
 ラ・リーガ第15節では右サイドからのボールをダイレクトで縦へとはたき、ブラヒム・ディアスのゴールを見事におぜん立て。針の穴を通すかのような精密さと相手守備が予想もしないコースを通す大胆さが見事に融合したパスだった。

 ディアスが「ゴールはすごくうれしいけど、でもあれはトニによるものだよ。他の誰にも見えないようなパスコースが見えているんだ。ほんとうにすごいよ。いつでもチャンスにつながるように味方選手の動きを観察している。トニ・クロースはスペクタクルな選手だ」と絶賛の言葉を並べていたのもうなづける。

ウニオン戦に向けての前日記者会見で、アンチェロッティは夏に契約が切れるクロースの去就について、次のように話していた。

「いいプレーをしているし、彼が残りたいのかそうではないのか、自分で決断することができるよ」

 百戦錬磨のクロースやモドリッチからベリンガムをはじめとする若手選手が学べる価値は計り知れないものがあるだろう。それはピッチ上のプレー内容だけではなく、トップレベルで戦い抜く選手として、そして人間としての立ち振る舞いや心構えを常に目の当たりにできるのだから。

取材・文●中野吉之伴

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