対戦相手の目には、安藤の姿はどう映ったのか。なでしこリーグ、WEリーグで、長期間、対戦してきた INAC神戸レオネッサのストライカー田中美南に「ディフェンダー安藤梢」と対峙した際の印象を問うと、次のように解説してくれた。

「駒場での対戦時にマッチアップが初めてだったと思うんですけれども『ディフェンダーじゃない動き』をしてきた。フォワードがもらいたいところだったり、動きたい場所だったりを、予測するのがやっぱり速くて、そこの潰しに何回もやられているシーンがありました。今までの安藤さんの経験が活きていて、すごく（相手にしていて）嫌でした」

　14得点で今季のWEリーグ得点王に輝いた、日テレ・東京ヴェルディベレーザの植木理子は、なでしこジャパンで活躍する安藤の姿を見ながら、成長してきた。植木もまた、経験に裏打ちされた安藤の読みに苦しめられたという。

「サイドとかでは、たまにマッチアップとかありましたけれども、今まで、なでしこジャパンでの活躍を見てきた（自分の中では）フォワードの安藤選手と、まさかここにきてマッチアップすることになるとは思っていなかった。

　最初、センターバックをやっている姿にびっくりしましたけれど、初めてやったとは思えないくらいに、フォワードの嫌な動きを知っている選手のプレーをしてきたので、何度やられたか分かりません。本当に嫌でしたが、一緒にプレーできて楽しかったです」
 

　長く女子サッカーを見てきた記者の中にも、スピーチする安藤の姿に、思わず涙する者もいた。新境地に臆さず挑み、どんな場所に置かれても“咲ける”ことを証明する安藤に、立ち上がる勇気だったり、諦めない力だったりを、もらった人は、決して少なくない。

　大ベテランの受賞にはたくさんの「おめでとう」が贈られていたが、それに負けないくらい、たくさんの「ありがとう」も贈られているはずだ。

取材・文●西森彰（フリーライター）

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