準決勝の広州恒大戦は、23歳のセルジ・ロベルト、20歳のムニル・エル・ハッダディらが全力を尽くし、この日はMSNが揃い踏みで活躍。マスチェラーノがなにより喜んだのは、このタイトルをチーム一丸で掴んだことだった。
 
「怪我から戻った直後にプレーしたメッシとネイマールの姿勢は、みんなが見習うべきだ。でもね、このタイトルを獲れたのは、数人の素晴らしい選手がいたからというわけではない。人として、優れた選手がこのチームに揃っているからさ」
 
　リーベルの選手と監督からも完敗を認め、「個々の能力の高さだけでなく、チームとして良くプレーしていた」（マルセロ・ガジャルド監督）などバルサを賞賛する声も出た。
 
「相手チームから称えられるようなところに所属できて、それはとても嬉しい。ここ３年は欧州代表が優勝していたけど、その前はコリンチャンスが優勝していたから、簡単に勝てるとは思っていなかった」
　
　全力で古巣を倒した。ただ、それは相手がどこであろうと、場所がどこであろうと関係なく、いつも通りの“全力プレー”を見せたのだと言えた。
 
  身長174センチ。最終ラインのCBの位置に入ると、その身体が一段と小さく見えた。とはいえ、存在感はずば抜けていた。ボール際では絶対に負けないという覚悟と意地が、一つひとつのプレーからメッセージを発するようにスタンドに伝わってきた。
 
　その気迫溢れるプレーを見ながら、12月24日に発売される『サッカーダイジェスト』の高校選手権ガイドの全選手リストを作成していた際、「174センチの高校生DF」がたくさんいたことを思い出した。日本で見せた“世界一”の守備職人の気持ちのこもったプレーは、数多くの決して身体が大柄とはいえないDFに希望と勇気を与えたはずだ。
 
　MSNの豪快さも、イニエスタの華やかさも持っていないが、バルサが盤石の勝利を挙げられたのはマスチェラーノがいたからだ。
 
　彼が日本に残していったものは、もしかすると、かなり“大きい”かもしれない。
 
取材・文：塚越 始（サッカーダイジェスト編集部）
取材協力：井川洋一（フリーライター）

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