岩下が激昂したのは、むしろチームの今後を思ってこそ。
もっとも、ふたりともプロである。ハーフタイムの間に事態は収拾した。
「しっかり話をして、後半は(パトリックが守備の役割を)やってくれていた」(岩下)
サッカーでよくある場面と言ってしまえばそれまでだが、今後の日程を鑑みれば、岩下の行動にも頷ける。
川崎戦から中2日でナビスコカップ準決勝第1戦の新潟戦(10月7日、第2戦は同11日)が待っており、その間は代表組4人(宇佐美貴史、丹羽大輝、米倉恒貴、東口順昭)が不在。さらにその後、14節の浦和戦(同17日)、ACL準決勝第2戦・広州恒大戦(同21日)と、過密日程のなかでタイトルの行方を占う重要な試合が続くのだ。
小さなミスでも致命傷になりかねない。その意味で、問題点はすぐ解消すべきであり、守備のタスクをサボったパトリックに対して岩下が激昂したのは、むしろチームの今後を思ってこそであった。
「(パトリックが)ゴールを決めてくれて助かっているからこそ、やっぱりそこ(守備)はやってほしい部分。(CKからの)ゴールも彼の高さを活かすため、僕らが潰れ役をやって、やっと追い付いた。それはチームとして狙いを持ってやっているわけだから、守備の部分も約束事としてやってほしいと思っている」
岩下が繰り返した言葉は“約束事”。昨季の三冠を支えたのは堅守であり、緻密かつ堅牢な守備組織があってこその偉業達成だった。ここにきてその土台が揺らいだだけに、岩下が間髪を容れずに“約束事”を確認させたのは当然と言える。