なでしこの挑戦――名門アーセナルの再建を担う大野と近賀

カテゴリ:日本代表

松澤浩三

2014年03月21日

「リーグ全体に強烈なインパクトを残すと確信している」

ビッグクラブが力を入れはじめたこともあり、にわかに盛り上がりを見せているイングランドの女子サッカー。チェルシーは昨夏、この大儀見を獲得するなど戦力アップに努めている。 (C) Getty Images

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 たしかに、イングランドでプレーする日本人は、大野と近賀が初めてではない。昨夏に大儀見優季がチェルシーに入団した。ただし、そのチェルシーはリーグ3位が最高成績で、アーセナルとは言ってみればクラブの格が違う。

 大野と近賀は、いわば勝利が義務付けられた名門クラブへの移籍であり、しかもタイトル奪還という大命題を果たすためのキーマンという位置付けだ。シェリー・カー監督も、2人に大きな期待を寄せる。

「彼女たちが質の高い選手だというのは、だれもが知っていること。獲得したのは、成功を持続するためで、女子チャンピオンズ・リーグはビッグプレーヤーが活躍するために用意されたステージ」

 2011年のワールドカップを制し、ロンドン五輪の大舞台でも銀メダル獲得に貢献した大野と近賀の実績に触れ、カー監督は言葉を続けた。

「彼女たちはビッグステージでもハイレベルのパフォーマンスができる。CLでも活躍するだろうし、アーセナルの選手としてだけでなく、リーグ全体に強烈なインパクトを残すと確信している」

 大野と近賀の決意にも並々ならぬものがある。とくに大野は、リヨン・レディースでプレーした2年前の欧州挑戦がうまくいかなかっただけに、再チャレンジとなるこのアーセナルで是が非でも結果を残す心づもりだ。
「前回のリヨンでは残念な、惜しい思いをした。チャンスをくれたアーセナルに感謝している。チームのために何かできればと考えて(移籍を)決めた」

 30歳を目前にして海外初挑戦となった近賀は、イングランドでもうひとつの“キャリア初”を経験した。
「自分のなかではありえない。想像を越えることが起きるのが海外かなと思った(笑)」
 と目を丸くしたのは、センターバックでのプレー。練習試合で起用されたのだ。

 驚きながらも、もちろん、強い意気込みを抱いている。
「日本がワールドカップで優勝し、国内外で(女子)サッカーを見る目線が変わった。そういうなかで、海外のチームに日本人がいて、日本人がいるとチームが助かるな、と印象づけたい」

 大野と近賀の目指す先には、連覇を狙う来夏のワールドカップがある。だから2人は、「勉強したい。成長したい」
 とも繰り返した。

 新たなチャプターを開いた2人のアーセナルでのデビュー戦は、おそらく3月24日(日本時間25日早朝)、女子CL準々決勝のバーミンガム・レディース戦が濃厚だ。あくなき挑戦を続けるなでしこが、欧州の舞台で躍動するその姿を見るのが待ち遠しい。

【イングランドの女子サッカー】
女子リーグの発足は1991年。当時は「WFA(女子サッカー協会)ナショナルリーグ・プレミアディビジョン」と呼ばれ、「FA女子プレミアリーグ」を経て、2011年に現在の「女子スーパーリーグ(WSL)」となる。組織改編に伴いリーグ戦は拡大し、女子プレミアリーグは2部リーグに。所属チーム数は、1部に相当するWSL、2部のプレミアリーグともに8チーム。

選手やコーチは全員がプロ契約というわけではなく、まだセミプロの域を完全には脱していないが、WSL発足以降、ビッグクラブが女子部門に力を入れ始めるなど競技レベルは着実に高まり、裾野も広がっている。

今シーズンのWSLは、以下の8チーム。チーム名の後のカッコ内の数字は昨シーズンの順位。

リバプール(1)
ブリストル(2)
アーセナル(3)
バーミンガム(4)
エバートン(5)
ノッツ・カウンティ(6)
チェルシー(7)
マンチェスター・シティ(昇格)
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