【岩本輝雄】敗者のコンサドーレが示した絶対王者フロンターレの苦しめ方、倒し方

カテゴリ:連載・コラム

岩本輝雄

2021年05月18日

「それがチームとして共有されていて、スムーズに実践できている」

リスクを恐れずマンツーマンでの守備を採用するコンサドーレ。東京五輪代表候補の田中と三笘のマッチアップも見応えがあったね。写真:徳原隆元

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 結果的には0-2の敗戦。フロンターレと敵地で対戦したコンサドーレは、無敗で首位を独走するチームの牙城を崩すことはできなかった。

 それでも、コンサドーレの戦いぶりには見るべきポイントが多かった。今季も圧倒的な強さを誇る昨季のリーグ王者の苦しめ方、こうすれば勝てるんじゃないかという、ひとつのヒントを示したと思う。

 コンサドーレの守備は、基本的にはマンツーマンだ。誰かが外されれば即ピンチにつながる守り方だけど、リスクを恐れずに貫いているよね。

 4-3-3のフロンターレに対して、3-4-2-1のコンサドーレがハメに行った。CFのロペス、シャドーの駒井と小柏が、CBの谷口とジェジエウ、アンカーのシミッチを監視。フロンターレは後ろからのビルドアップも上手い。ここを自由にさせると、結局は押し込まれることになる。そうさせないためにも、前線の3枚がしっかりと立ちはだかる。

 そして、ウイングバックの菅と金子が、SBの登里と山根をケア。ダブルボランチの深井と高嶺が、インサイドハーフの旗手と小塚を見る。リベロの宮澤はダミアン、ストッパーの田中と福森が、ウイングの家長、三笘に対応する構図だ。

 ここで最も体力を使うのが、ウイングバックの菅と金子だ。フロンターレもさすがだったのは、この試合では登里も山根も、いつものようにそこまで高い位置を取らなかった。そうしたポジショニングで菅と金子を引き付けて、その背後を狙う。

 コンサドーレとしても、両サイドでの攻防で相手の狙いは理解していたと思う。それでもスペースに気を配るよりも、精力的なアップダウンで登里と山根に蓋をしようとする。

 両ワイドは途中交代するまでアグレッシブにプレーし続けた。それができたのは、コンサドーレがボールを握ることができていたから。フロンターレに負けず劣らず、ボールの動かし方には定評がある。持ち前のポゼッションでペースを掴み、ゲームを進めていた。

 とにかく、マイボール時の個々の立ち位置と相手の動かし方が上手い。たとえば、中央での最終ラインからの運び方。ダブルボランチの高嶺が落ちて宮澤とボールを動かしながら、もうひとりのボランチである深井がダミアンの背後に潜り込む。

 フリーになった深井に対して相手のインサイドハーフが食いついてくれば、中盤にぽっかりとスペースができる。そこにシャドーの駒井か小柏が下りてきて、縦パスを受けて前を向く。アンカーのシミッチからすれば、カバーすべき範囲が広がり、対応がやや遅れる。

 これはほんの一例にすぎないけど、簡単に言えば、相手を動かしてスペースを空けさせるポジショニングと、そのスペースに素早くパスを入れること。それがチームとして共有されていて、スムーズに実践できている。
 
 もちろん、どれだけ戦術面の練度が高くても、最後のフィニッシュで精度を欠けば、得点できないし、試合にも勝てない。フロンターレは苦しみながらも、自陣ゴール前では厳しさを見せて失点しなかったし、三笘、小林と抜群の決定力を誇るふたりが得点するなど期待通りの仕事ぶりで2-0の勝利を手繰り寄せている。

 勝ったのはフロンターレ。勝者にふさわしい戦いを見せたのは間違いない。でも、コンサドーレがピッチ上で示したものは、十分に今後に期待を抱かせるものだった。

 フロンターレの戦いぶりを見て改めて思ったのは、絶対王者のフロンターレに対しては、その圧倒的な攻撃力をリスペクトし過ぎて、構えて守ろうとするのは得策ではないということ。そうすれば余計に相手のストロングポイントを助長させてしまう。

 コンサドーレのように洗練されたビルドアップができれば理想的だけど、対フロンターレ戦では、自分たちでボールを回して主導権を握るとかアグレッシブな姿勢が有効のような気がする。がっぷり四つで対抗する。そうしたチームが、J1リーグ新記録の“22戦無敗”を達成したフロンターレの快進撃をストップするような気がするよ。

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