[高校選手権１回戦] 札幌大谷０-１大手前高松／１月31日（木）／味フィ西

　落ち着いた守備対応や立ち振る舞いは、まさに守護神という言葉が良く似合う。大手前高松が、前半25分に奪ったMF平田涼也(３年)の先制点を守り切ることができたのは、GK三谷幸記(３年)のおかげと言っても過言ではない。

　昨年の選手権は、強風が吹くゼットエーオリプリスタジアムで２試合に出場。MF滝平昂也(現・高松大)のロングスローが強風に乗って生まれたゴールによって、選手権初勝利を掴んだが、ボールの落下点が読みづらいグラウンドコンディションはGKにとってはやりづらいのも事実だった。

　しかし、今年の味の素フィールド西が丘は風がほぼなかった。加えて、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、観客は保護者とチーム関係者のみ。「昨年のゼットエーオリプリスタジアムとは違って風がなく、観客も少なかったので自分たちの声が通りやすかった。自分の伝えたいことがしっかり伝えることができたのは、やりやすかった」と振り返る三谷は、的確なコーチングでサイドの守備をケアし、危ない場面を与えない。加えて、正確な左足のキックでも、相手が高い位置から繰り出したプレスを回避した。

　後半は、最終ラインのコントロールが上手くできず、間延びした中盤のスペースを使われる場面が増えた。選手同士の統率がとれず、背後のスペースを突かれるシーンもあった。MF高桑輝人(２年)のパスから、FW秋山千颯(２年)がゴール前をフリーで抜け出した後半７分のピンチは、三谷がタイミングよく前方に飛び出し、ブロック。後半26分にも、FW伊東涼哉(３年)にペナルティエリア内への飛び出しを許したが、タイミングよく前方に飛び出し、シュートを打たせない。
 

「何回か１対１の場面があったけど、自分は１対１がセールスポイント。相手のファーストタッチが大きくなったところで飛び出したり、トレーニングから意識しているところが出た。自分なりに良い対応ができたと思っています」

　終盤は同点を狙った札幌大谷に押し込まれる時間帯が続いたが、三谷を中心に跳ね返し、逃げ切りに成功。三谷は、「今日の試合は自分たちの粘り勝ちだと思う。前半のうちに先制できたけど、その後に苦しい時間が何回かあった。苦しい時間をどれだけ耐えるかが試合のポイントで、そこを耐えられたのが勝因だと思います」と口にした。

「先輩について行くだけで良かった」と振り返る昨年までとは違い、今年は昨年の経験を還元するため、主将の大役を任された。この一年、自らの言葉に重みを持たせるため、私生活から見直し、チームを引っ張るために頑張ってきた。全ては、昨年の２回戦進出を超え、ベスト8まで進むためだ。

「ゼロ失点で抑えることができたのは凄く大きい。個の局面で勝てていた場面もあったので、そこは収穫」と話す三谷を中心に、次戦以降も大手前高松は堅守を武器に白星を積み上げていくつもりだ。

取材・文●森田将義（サッカーライター）

【高校サッカー選手権１回戦PHOTO】札幌大谷０－1大手前高松｜平田の先制ゴールを死守した大手前高松が札幌大谷を下して2回戦へ