(サッカーダイジェスト7月9日号 別冊付録 「高校サッカー逸材300選」より転載)
――調べてみると遺伝子検査キットを販売している会社は日本にたくさんありますね。いまや遺伝子検査はメジャーなものなのでしょうか?
「6~7年前、美容業界を中心に検査がブームになりました。3つの肥満遺伝子というのがあって、あなたはどのタイプ? という感じで」
「その通りで、エステやジムで広まり、市場も大きいので、すぐに大手さんも参入してきました。ただ結果としては、一時期に流行した動物占いみたいなものでしたね」
そのころ、私もエステティシャンやトレーナー、ダイエットカウンセラーから依頼を受けて遺伝子検査キットの仲介をしていたので、空気みたいなものは感じていました」
「お客さんが満足しているのか、疑問を持つようになって、実際に自分で検査を受けてみました。その結果をもとに、栄養士にアドバイスを受けて、ダイエットに挑戦したのです。そしたら3週間で4キロ落ち、3か月で8キロ落ちました。運動をしたわけではなく、食事を変えただけです。体質を理解しているので2年以上経ってもリバウンドしません」
「流行り廃りで終わらせるのはもったいないな、と。遺伝子情報の正しい活用法を広めて、リテラシーを上げることが必要だと思い、ちょうど2年前、分社化してこの事業に本腰を入れました。遺伝子分析結果をもとに、食事などをカウンセリングする"ユアプロ"のスタートです」
「筋繊維が瞬発系か、持久系か。筋肉が落ちやすいタイプか、落ちにくいかタイプか。筋損傷を起こしやすい人、ストレスを感じやすい人かどうか、なども分かります」
「まったく違います。遺伝子情報イコール才能ではありません。筋肉が瞬発系でない選手が、100メートルで9秒台を出すのは難しいだろう、といったレベルの話。とくにサッカーは、ポジションやスタイルによって求められる能力も違うわけですから、強いところを伸ばして、弱いところを補えばよいのです。
名前は出せませんが、トップアスリートの中にも疲れがとれづらい、脂肪がつきやすい、ケガをしやすい、という一見スポーツに適さないと思われる先天体質の選手もいました。遺伝子の話の流れで、こう言っては少し期待外れかもしれませんが、食事でもトレーニングでも大切なのは、日々の努力の積み重ねなのです」
――遺伝子検査の結果は、重要ではないということですか?
「結果が掲載されたレポートはただの紙切れでしかありません。重要なのはその活かし方。ですから、ユアプロでは栄養士が食事・栄養のアドバイスをするサービスの中で遺伝子情報を活用することにしました。
体質に合わせたアドバイスをすることで本人が納得して取組むことができます。それによってパフォーマンスの向上だけでなく、ケガのリスクを軽減でき、結果、キャリアも長くなる。ユアプロでカウンセリングを受けているJリーガーも皆が、そのことを実感してくれています。もっと早くこのサービスを知りたかった、と残念がっていますよ」