サポーターから愛されたふたりのGKが大宮で邂逅 加藤順大と塩田仁史、それぞれのストーリー

カテゴリ:Jリーグ

塚越 始(サッカーダイジェスト)

2014年12月31日

リーグデビュー戦が“さいたまダービー”だった加藤の決意。

浦和から大宮への移籍が決まった加藤。1年でのJ1復帰と“さいたまダービー”の実現を決意する。(C) SOCCER DIGEST

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 ふたりのGKが大宮で邂逅する。
 
 ともに波乱と紆余曲折を乗り越え、愛着あるひとつのクラブでプレーを続け、プロとして10年以上のキャリアを積み上げてきた。試合出場数や失点数といった記録だけでは計り知れない、いろんな意味で貢献度の高いチームのキーマンだった。
 
 それだけに、今回の移籍に複雑な想いを抱いているファンもいる。一方で、思うように出場機会を得られなかったものの、ふたりの実力や貢献度を知っているからこそ、他クラブでどれだけ活躍するかを見てみたいと思うファンも少なくないだろう。
 
 邂逅=偶然な出会い、巡り合い――。1年でのJ1復帰を目指す大宮で、2015年、多くの人々から愛されてきたふたりのGKが顔を合わせ、熱いレギュラー争いを展開する。
 
――◆――◆――
 
 浦和の大型補強がクローズアップされる一方、浦和ひと筋で戦ってきた男が静かに同じさいたま市をホームタウンとするライバルチームへ移籍していった。
 
 12月11日に30歳の誕生日を迎えたGK加藤順大だ。今季は広島から移籍してきた西川の控えとして、リーグ戦のピッチには立てなかったものの、ナビスコカップでは6試合に出場している。
 
 そのキャリアからは、若くして苦労人だったことが窺える。浦和ユース出身で、リーグ戦デビューまで苦節9年を要した。運命的と言えるのが、その記念すべき初陣が11年・14節、NACK5スタジアムでのさいたまダービーだったことだ。
 
 DFのミスから2点を先行されたものの、加藤は再三にわたるファインセーブを見せて流れを引き寄せる。エジミウソンがPKを沈めて1点差とし、そして87分、原口がDF3人を抜き去って最後はスライディングシュートをねじ込む“伝説のゴール”が生まれた。浦和は辛うじて2-2の引き分けに持ち込み、一度踏み込んだら抜け出せそうにないJ1残留争いの泥沼にハマりそうな最悪の流れを食い止めた。
 
 そんな転機となった一戦を、加藤は次のように振り返っている。
「2失点したから、とにかく悔しくてたまらなかったですよ。しかも勝てませんでしたから。でも、それからシャワーを浴びて、取材を受けて、バスに乗って、席に座って。そこでひと息ついた時ですね。ふと、ああそうか、やっとリーグ戦でデビューできたんだ。9年か、長かったなあと思ったのは」
 
 その試合から加藤はレギュラーの座につき、一時はJ2降格圏まで低迷したチームの窮地を再三に渡るビッグセーブで救った。同年のサッカーダイジェストの平均採点5.96は、主力選手の中でチーム最高だった。
 
 翌12年から13年終盤まで、現在のミハイロ・ペトロヴィッチ監督の下では、ミシャ(指揮官の愛称)スタイルのベースを築くのに貢献した。
 
  加藤が最も心掛けたのが、試合の流れをよく読むこと。ボールをキャッチせずにDFへパスをつなぐか、一旦呼吸をおいてから上から投げるか、下から投げるか、高くボールを蹴って時間を作るか、ライナー性にしてカウンターを狙うか。プレーの一つひとつが繊細で、気配りがとてもきめ細かい。そうやってチームにミシャスタイルが浸透していく“良い流れ”を作った。
 
「流れを大切にすることは浦和ユースにいた頃から意識していたことでした。ただ、『武器にしなければ生き残れない』と思ってより伸ばそうと取り組み出したのが2009年頃から。僕としては、試合を崩さないというよりも、常に自分でチャンスを作るんだというぐらいに思うようになりました。確かに勢いを失わないように細心の注意を払って、一つひとつのプレーに気を配ってきましたね」
 
 最後方にいながら攻撃を常に意識する。紅白戦ではフィールドプレーヤー役も時々務める足下の技術の高さは、確かにミシャスタイルの定着には不可欠だった。ちょうど、技術力のあるGKを求め出した時代の潮流に乗ったとも言えた。
 
 昨季まで加藤がレギュラー争いを続けたのが、今冬のJ1昇格プレーオフで抜群の存在感を放った山形の山岸範宏である。そのライバルがいたからこそ、加藤が「武器」の必要性を感じたのも事実だった。浦和の土田尚史GKコーチはふたりのストロングポイントの違いについて、次のように語っていたことがある。
 
「ふたりともまったく異なる武器を持っているからね。山岸は抜群のシュートストップ力を備えている。一方、ノブはGKのなかでも高い足下の技術を備えている。それはミシャ(ペトロヴィッチ)監督のGKからも攻撃に参加するポゼッションスタイルのベースを築く発展させていくうえで、欠かせない存在だったのは事実」
 
 最初に「苦労人」と書いたことを、本人は否定するかもしれない。加藤は次のようにも語っている。
「僕はとにかくサッカーが大好き。悔しい想いはしてきたけど、『もう、嫌だ』と思ったことは一度もないですね。投げ出したくなる? いや、考えたことは一度もないです(笑)」
 
 根っこのところが、とにかく明るい。浦和ではそのキャラクターがまずベースにあるからこそ、多くのサポーターから愛された。
“逆禁断移籍”を決断するまでに、相当悩んだはずだと容易に想像できる。おそらく中学時代は大宮FCでプレーしていたことも決め手のひとつになっただろう。もちろん、大宮の一員となった以上、浦和を最大のライバルとして戦う覚悟も固めたはずだ。心に宿る“MADE IN さいたま”というプライドを持って、「来年はJ1で、さいたまダービーを実現する」と決意を語る。

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