低迷するJ2栃木に訪れた勝負の夏。J3降格を知るベテランは何を思う

カテゴリ:Jリーグ

桜井 誠

2019年06月02日

苦渋の歴史を知る廣瀬に悲壮感はない

15節を終えた段階で3勝6分6敗。栃木は思うように勝点を重ねられずにいる。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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 栃木の反転攻勢への挑戦が続いている。難敵と目されていた甲府、大宮、岡山の3連戦を1勝2分けで乗り切り、勝点は15。最下位まで落ちた順位も、15節終了時点でなんとか18位まで上がってきた。しかし、最下位・岐阜との勝点差はわずか3しかなく、首位をいく水戸とは「ダブルスコア」。チーム状況は上向いてきたが、依然、下位争いの厳しい状況にさらされている。
 
 12節の徳島戦で黒星を喫し、チームは一時的だったが最下位に落ちた。田坂和昭監督は「もう一度、意思統一はしないといけないが、選手たちの熱量はだんだん増えてきている」と前向きに語ったが、3年前のJ3降格を知る関係者やサポーターなど周囲は少なからずざわついた。2015年11月、ホーム最終戦に敗れ、悔し涙とともにシーズン終了の挨拶をした廣瀬浩二主将(当時)の姿は、あの場に居合わせた誰もが覚えている。
 
 あれから4年。昨年からJ2復帰も果たした。降格、昇格でメンバーも大幅に入れ替わり、当時のJ3降格を知る選手は、廣瀬、菅和範のベテランと、当時2年目の若手だった坂田良太の3人だけになった。J3降格の憂き目が過去のものとなりつつある中、選手たちはいつものようにトレーニングを重ねたが、「あの日」を知る周囲の人々にとって最下位の衝撃は小さくはなかった。
 
「スポンサーやサポーターの方々は心配していると思う。この順位にいることは想像できなかった」
 
 チームの苦渋の歴史を知る廣瀬は、そう胸の内を語った。ただ表情に悲壮感はなく、「最下位にいて、良いのか悪いのかは分からないがチームの雰囲気はいい。大切なことは負のスパイラルに陥らないこと。チームがバラバラになってはいけない」と淡々と話した。一方、菅も「最下位といっても何試合残っているかで状況は全然違ってくる。順位を過度に意識し過ぎるのは良くない。シーズンが終わった時に目標を達成できているかどうかが重要」と焦りはない様子。周囲にある喧噪とは裏腹に、ベテランたちの表情はいつもも変わらなかった。

「残留争い、そして降格を経験したからといって、あの時、何が足りなかったかなんて今も分からない。悔しい思いをしただけ」と菅。だが、組織を冷静に俯瞰でき、リーグを大局から見られるベテランふたりの存在は、彼らに出場機会が巡ってこない中でもチームに大きな力になっていることは間違いない。
 
 それを裏付けるかのように、そこからチームは3戦負けなし。最下位で迎えた13節では、劣勢の中でも集中を切らすことなく、チーム史上初めて甲府から勝利をもぎ取った。大宮戦は押し込まれながらも引き分けに持ち込み、岡山戦は追い付いてのドロー。昨シーズン、J2で出場機会がなかった廣瀬はその3試合すべてでベンチ入り。菅も甲府戦でベンチに入ると、大宮戦は途中出場ながら今シーズン初出場、岡山戦では先発出場を果たした。
 
 リーグは中盤戦に差し掛かり、ハードワークを身上とするチームには厳しい夏もやってくる。「チームも個人もまだまだ成長していかないといけない。下位にいる状況を受け止めて、1試合1試合を大切に戦っていく」と廣瀬は表情を引き締める。下位にあえぐチームにとって停滞は許されない勝負の夏、それはベテランたちにとって存在感を高める勝負の夏でもある。
 
取材・文●桜井誠(下野新聞社)
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