フォーサイスのメソッドは最先端を行く。
故障者の続出がひとつの原因で目に見えて失速し、またしてもリーグ優勝に手が届かなかったのが昨シーズンのアーセナルだった。今シーズンもまた負傷者が続出しており、チームはさながら野戦病院と化している。
開幕から1か月が経過した現時点で、すでにオリビエ・ジルー、マテュー・ドゥビュシーが長期の離脱を余儀なくされ、セオ・ウォルコットは左膝前十字靱帯の断裂で昨シーズンから欠場中だ。もう戦列復帰を果たしているが、ミケル・アルテタとキーロン・ギブスは開幕から出遅れた。
もともと層が薄かったこともあり、ドゥビュシーを失った最終ラインは、それこそ火の車だ。カラム・チェンバースが扁桃腺炎で欠場したチャンピオンズ・リーグ(CL)のドルトムント戦は、19歳のエクトル・ベジェリンを先発で起用せざるをえなかった。
スペインU-19代表に名を連ねるベジェリンは、プレミアリーグデビュー前の「ルーキー」で、CLの舞台はもちろん初体験。経験不足が明らかな右SBは、案の定、チームの足を引っ張り、0-2の完敗の一因となった。試合後、アーセン・ヴェンゲル監督の曇った表情が、事態の深刻さを語っていた。
ある統計資料によれば、昨シーズンのアーセナルの怪我の発生率はリーグでワーストだった。負傷者が続出するこの状況をいよいよ憂慮したヴェンゲル監督は「緊急事態」だとし、このオフ、メディカル部門の改革に乗り出している。
選手のコンディショニングを管理するフィットネスコーチに招聘したのは、アメリカ人のシェイド・フォーサイス。ワシントン生まれの41歳はこの分野の第一人者で、この夏まで10年間、ドイツ代表のフィットネスコーチとして辣腕を振るった。ドイツ人記者によれば、フォーサイスは「ドイツ代表をワールドカップ優勝に導いたキーパーソン」だ。
ヴェンゲルが期待しているのは、フォーサイスのメソッドだ。「思考」「栄養」「動作」「回復」という4本柱を軸とするフォーサイス流は、スポーツ医学の最先端を行く。
目に見える効果はまだ表われていないが、例えば、選手個々に任せきりだった試合中のウォームアップも細かく管理するなど、フォーサイスの改革は進む。アメリカ人のフィットネスコーチは覇権奪回の切り札となるのか。注目だ。
【記者】
Jeremy WILSON|Daily Telegraph
ジェレミー・ウィルソン/デイリー・テレグラフ
英高級紙『デイリー・テレグラフ』でロンドン地域を担当し、アーセナルに精通。チェルシーとイングランド代表も追いかけるやり手で、『サンデー・タイムズ』紙や『ガーディアン』紙にも寄稿する。
【翻訳】
田嶋康輔
開幕から1か月が経過した現時点で、すでにオリビエ・ジルー、マテュー・ドゥビュシーが長期の離脱を余儀なくされ、セオ・ウォルコットは左膝前十字靱帯の断裂で昨シーズンから欠場中だ。もう戦列復帰を果たしているが、ミケル・アルテタとキーロン・ギブスは開幕から出遅れた。
もともと層が薄かったこともあり、ドゥビュシーを失った最終ラインは、それこそ火の車だ。カラム・チェンバースが扁桃腺炎で欠場したチャンピオンズ・リーグ(CL)のドルトムント戦は、19歳のエクトル・ベジェリンを先発で起用せざるをえなかった。
スペインU-19代表に名を連ねるベジェリンは、プレミアリーグデビュー前の「ルーキー」で、CLの舞台はもちろん初体験。経験不足が明らかな右SBは、案の定、チームの足を引っ張り、0-2の完敗の一因となった。試合後、アーセン・ヴェンゲル監督の曇った表情が、事態の深刻さを語っていた。
ある統計資料によれば、昨シーズンのアーセナルの怪我の発生率はリーグでワーストだった。負傷者が続出するこの状況をいよいよ憂慮したヴェンゲル監督は「緊急事態」だとし、このオフ、メディカル部門の改革に乗り出している。
選手のコンディショニングを管理するフィットネスコーチに招聘したのは、アメリカ人のシェイド・フォーサイス。ワシントン生まれの41歳はこの分野の第一人者で、この夏まで10年間、ドイツ代表のフィットネスコーチとして辣腕を振るった。ドイツ人記者によれば、フォーサイスは「ドイツ代表をワールドカップ優勝に導いたキーパーソン」だ。
ヴェンゲルが期待しているのは、フォーサイスのメソッドだ。「思考」「栄養」「動作」「回復」という4本柱を軸とするフォーサイス流は、スポーツ医学の最先端を行く。
目に見える効果はまだ表われていないが、例えば、選手個々に任せきりだった試合中のウォームアップも細かく管理するなど、フォーサイスの改革は進む。アメリカ人のフィットネスコーチは覇権奪回の切り札となるのか。注目だ。
【記者】
Jeremy WILSON|Daily Telegraph
ジェレミー・ウィルソン/デイリー・テレグラフ
英高級紙『デイリー・テレグラフ』でロンドン地域を担当し、アーセナルに精通。チェルシーとイングランド代表も追いかけるやり手で、『サンデー・タイムズ』紙や『ガーディアン』紙にも寄稿する。
【翻訳】
田嶋康輔