【J1・20節クローズアップ】「覚醒」へ、武藤雄樹が確信の2ゴール|仙台 3-2 清水

カテゴリ:Jリーグ

広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

2014年08月17日

プロ4年目にして初めての1試合2ゴール。

9分間で奪った鮮やかな連続ゴールは、「覚醒」への確かな自信になったはずだ。 (C) J.LEAGUE PHOTOS

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 8月16日のJ1・20節。浦和対広島のビッグマッチに、日本代表の新監督に就任したハビエル・アギーレが足を運び、初めてのJリーグ視察を行なった。新生日本代表の「オーディション」がいよいよ始まり、各会場で次代の代表候補たちがハイパフォーマンスを見せるなか、杜の都でもひとりのストライカーが強烈なインパクトを放ってみせた。
 
 仙台対清水の一戦で、仙台の武藤雄樹は、プロ生活4年目にして自身初となる1試合2得点の活躍を見せた。
 
 12分、野沢拓也からの完璧なパスを受けると、そのままドリブルで突き進み、対峙する敵をワンステップでかわして左足を思い切り振り抜く。豪快にゴールネットを揺らした先制点に続き、21分には、太田吉彰の縦パスに対し、素早く反応した相手DFの鼻先をかすめるようにボールを足下に収め、ゴールへと直進。追いすがる別のDFを間一髪で振り切り、今度は右足でループシュートを沈めてみせた。
 
「ループを打ったつもりはないんですけど(笑)。偶然、ボールが浮いたというか、GKが出てきていたので、自分としてはファーサイドを狙ったら、相手に当たって、ああいう形で決まりました」
 
 高いシュート技術が凝縮された痛快な連続ゴールにも、しかし本人に浮かれた様子は微塵もない。
「なかなか点を取れずにいたので、そういう意味では本当に良かったですけど、これで終わらぬよう、コンスタントに点が取れるように頑張っていきたい」と、むしろ表情を引き締めていた。
 
 2011年、大学サッカー界の注目選手のひとりとして仙台に加入。高卒ルーキーとは違い、即戦力として期待されるのが大卒ルーキーだが、1年目はわずか1ゴールに終わった。出場機会を増やした2年目も同じく1ゴールで、3年目の昨季は22試合に出場しながら、リーグ戦はおろか、ナビスコカップでも、天皇杯でも、ひとつのゴールも決められなかった。
 
 誰もがそのポテンシャルを認めているのは間違いない。ピッチに立てばキレのあるドリブルを披露し、多くのチャンスを演出してみせる。しかし、肝心のゴールが思うように奪えない――。
 
 25歳となった今季、チームは序盤戦から低迷する。勝利に見放され、自身もいよいよ危機感を強くしていた。
 
 そんな4月のある日だ、彼にその心境を聞いたのは。
「試合にも出させてもらっているのに、ずっと結果を残せてなくて、ここまで来てしまった。本当に、そろそろしっかり結果を出さないと……なんていうんですかね、このままでは自分の今後がなくなってしまうと思っています」
 
 周囲からの期待は、痛いほど理解している。平均年齢の高いチーム事情のなか、自身の「覚醒」が常に求められてきていることを。
 
「フロントだったり、スタッフだったり、サポーターからもそうですけど、『そろそろ下の世代から出てきてもらわないと困る』というようなことは言われているので。僕も決して若いほうではないですけど、次の世代を担うべき存在ではあると思っています。今の主力からポジションを奪っていかないと、状況は変わらない。ポジションを奪えば、またチームも活性化されて、良い影響を与えられるはず。自覚はあります。チーム内での競争に勝って、信頼を勝ち取りたい」
――期待しています、と最後に声をかけると、「頑張ります」と笑顔を見せていた。
 
 あれから約4か月。5月6日の12節・神戸戦で今季リーグ戦初ゴールを決めてはいたが、しかしその後が続かず、7月のリーグ再開後はしばらくベンチスタートの日々だった。
 また、今季も同じことの繰り返しなのか――。
 
「今年はスタメンが増えているなか、自分としては、良いプレーができているというか、通用すると感じていますけど、結果がついてこなかった。FWはゴールの数で見られる部分があると思うし、シュートはすごく練習してきた」
 
 再びチャンスを掴むために不断の努力を貫き、前節の甲府戦で6試合ぶりに先発復帰を果たすと、この日の清水戦でもスターティングメンバーに名を連ねる。
「今日はタクさん(野沢)との2トップでしたけど、どちらかというと縦の関係で、僕の下でタクさんが動く形だったので、自分が決めないといけないとは感じていて。そういう意味では、緊張というか、“やってやらないと”という気持が本当に強かった」
 
 そして前述のように、揺るぎない使命感で2ゴールを記録。これでシーズン通算3得点目。キャリアハイであると同時に、不完全燃焼だった過去に区切りをつけるひとつの結果とも言っていい。
 
 ゴールを決めた後に強く握りしめたその拳のなかには、これまで何度も掴み損ねてきた確かな自信が包まれているはずだ。待ち望まれた「覚醒」の日は近いかもしれない。
 
取材・文:広島由寛(週刊サッカーダイジェスト)
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