芸術的なテクニックと創造性溢れるプレーで、イタリアサッカー史上最高のプレーヤーのひとりに挙げられるアレッサンドロ・デル・ピエロ氏。ワールドカップチャンピオンであり、チャンピオンズ・リーグでもユベントスを栄冠に導いたファンタジスタが岐阜にやって来た。


　FC岐阜のホームゲーム、J２リーグ34節・東京ヴェルディ戦に訪れたデル・ピエロ氏は、ほぼ丸１日、岐阜メモリアルセンター長良川競技場をジャックした。この日の入場者数は今シーズン最多であり、シーズン平均を約5,500人上回る１万2045人となり、チームも１-１のドロー、7月から続いていた連敗を10で止めた。
 
　デル・ピエロ氏来場のきっかけとなったのは、FC岐阜のマスコットであるギッフィーが、ユニホームを彼にプレゼントしたこと。今シーズン、FC岐阜のユニホームの左袖には「キャプテン翼」が描かれており（スポンサーのキャプテン翼スタジアム垂井／野田クレーン）、デル・ピエロ氏が大の「キャプテン翼」ファンであることを、ギッフィーが知っておりイタリアまで贈った。原博実・Jリーグ副理事長、タレントの平畠啓史さんとのトークショーでは、本人からそのプレゼントの話も出た。「おかしな話だが、誰だか知らない（笑）日本のギッフィーからユニホームをもらってびっくりした」しかし、それからギッフィーとの交流が始まり、もともと親日家でもあったデル・ピエロ氏の来場にまで至った。
 
　デル・ピエロ氏はこの日の午前中、子供のサッカー教室にゲストとして登場。約１時間、子供たちとボールを蹴り交流を深めた。その後、ギッフィーとフリーキックで対決し、キックインセレモニーも行うなど、盛りだくさんのスケジュールで精力的にスタジアムを盛り上げた。
 
　試合前に行なわれたメディア向けの記者会見では、子どもたちとのサッカー教室は印象に残ったようで、「短い時間のなかで、みんな情熱を持ってプレーしてくれた。とても良かった」と話し、「今日見せてくれた情熱、スマイル、喜びを持って続けてほしいし、サッカーだけではなく、勉強でも何でも情熱が持てることを探して、取り組んでいってほしいと思います」とメッセージを送った。
 

　さらに、自らの少年時代にも触れたデル・ピエロ氏は、「私はマラドーナ、プラティニ、ファン・バステン、ジーコの技を盗みながら、自分にベストなプレーを考えてきました。子供たちにも尊敬する選手を真似しながら、自分のプレーを見つけてほしいと思います」と、レベルアップの秘訣も明かしていた。
 
「１日とても楽しかったし、幸せでした。ただ重要なのはこの後のゲーム」と岐阜の試合にも言及。「調子を落としていることは知っていますし、勝てない時は悪いことが起きたり、信頼を失ったりします。最も大事なことは、先週の試合ではなく、次の試合にフォーカスしてみんなで力を合わせてやっていくことです」とアドバイスを送り、「この状況を変えるためにやってきましたし、私もひとりのサポーターとしてFC岐阜をサポートしていきます」と話し、苦境にあえぐチームの応援が来訪の目的のひとつだったことも明かしていた。
 
取材・文●小崎仁久（フリーライター）

【写真】岐阜来訪のデル・ピエロ氏を激写！