【７月10日・サンクトペテルブルク｜準決勝　フランス １-０ ベルギー】
 
　スコアレスで迎えた後半、開始６分でCKを得たフランスは、グリエーズマンが入れたボールを、ニアでCBのウンティティが頭で合わせ、名手クルトワが守るゴールを破って貴重な先制点を奪った。
 
　堅守をウリにするチームにとっては、この１点で十分であり、フランスはベルギーの残り時間での反撃をかわして、2006年ドイツ大会以来の決勝進出を果たすとともに、自国開催の1998年大会以来となる２度目の世界制覇に王手をかけた。

 
　さて、この決勝ゴールがウンティティというDFの選手によって挙げられたことが、一部のフランス人に、過去の輝かしい瞬間を思い起こさせるようだ。それは前述の98年大会。奇しくも、準決勝で初出場のクロアチアを２-１で下した時、チームの全得点を決めたのが、同じDFのテュラムだった。
 
　それまで代表チームで得点のなかった右SBは、46分にシュケル（同大会の得点王）の先制ゴールを許した直後、大胆な攻め上がりを見せ、FW選手を差し置いてジョルカエフのスルーパスに反応、DFラインの裏に抜け出してGKラディッチの牙城を崩した。
 
　さらに69分にもテュラムはポジションを高く取り、相手ペナルティーエリア前でボールを奪取すると、左足で巻いたシュートをゴール左隅に流し込み、チームを逆転勝利に導いた。これには、敵も味方も大いに驚いたという。
 
　これに比べれば、セットプレーでのCBの得点は決して珍しいことではないが、栄光の大会との共通点を無視することはできないと、試合後の記者会見でフランス・メディアが、デシャン監督に「これは何かの暗示だと思うか？」と質問した。
 
　これに対し、98年はキャプテンとしてチームを優勝に導いた指揮官は「その質問には、何とも答えようがない。みんなそれぞれ、違う運命を持っているからね。それより、今は勝利の喜びを味わおうじゃないか。我々には５日間の時間がある。48時間は家族のために費やし、その後でしっかり決勝に向けて正しく気持ちを切り替えよう」と答えた。
 
　またメディアからは、「98年と同じ感情を抱いたか？」という質問も受けたデシャン監督。これについては「当時とは違う」と否定している。
 
「立場が違うからね。今は選手を見守るのが、私の役割だ。彼らと一緒に仕事ができることは嬉しいし、このことに誇りを感じている。選手たちは堂々と『世界王者になりたい』と言える強さを持っているし、実際にその力がある。しかしまだ、我々は何も成し遂げていない」
 
　フランスの戦いぶり同様、現実主義のデシャン監督らしい返しだ。もちろん、ジンクスに頼らなくても、今の彼らには世界制覇を果たすことは十分に可能である。果たしてメディアの期待通り、「レ・ブルー」は15日のモスクワで20年前のサンドニの歓喜を再現できるか!?