【番記者通信】揺るぎないコンテの矜持|ユベントス

カテゴリ:メガクラブ

ロメオ・アグレスティ

2014年02月25日

禍根を残しかねないカペッロとの舌戦

セリエAは2位ローマに9ポイント差をつけて首位に立つが、コンテに油断はない。 (C) Getty Images

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 今後に禍根を残しかねない舌戦だった。ファビオ・カペッロとアントニオ・コンテ、ユベントスの新旧監督で、イタリアサッカーを語るうでも重要な人物同士が激しい口論に及んだのだ。

 コンテは、監督としての自らの哲学に並々ならぬ誇りを抱いている。そしてそれが他の監督と同じ物差しで評価され、比較されるのを嫌うのだ。自分の畑を大事にすること、すなわちハードな練習を通して結果を出すことは、イタリア王者の指揮官の矜持とするところ。それに難癖をつけられたのだ。
「(試合の結果によって)休みを取り消すなどの罰を選手に与えることは、私でもやらなかった」
 カペッロのこの発言は、コンテには我慢がならなかった。

 争論は、カペッロが一歩引く形で収拾を見た。
「悪いパフォーマンスのあとで選手に罰則を科してはいけない」という言葉を、コンテに対する私怨の表われとしてメディアがねじ曲げて伝えたのだという釈明をし、元ゼネラルマネジャーのルチアーノモッジまで参戦した舌戦は鎮静化した。

 幸い、騒動がチームに悪影響を及ぼすことはなく、ユーベは25節のトリノダービーを1-0で制した。勝負を決めたのはカルロス・テベスの卓越したタレント力で、非常に良く組織された対戦相手から挙げたこの1勝は、スクデット争いにおいても非常に大きな意味を持つだろう。実際、ジャンピエロ・ヴェントゥーラ監督に率いられたトリノはユーベを苦しめた。チ―ロ・インモービレのシュートは決まっていてもおかしくなかったし、とりわけユーベにとっては、PKの笛が吹かれるべきアンドレア・ピルロのファウルが見逃された幸運に恵まれたのが大きかった。そうでなければ、引き分けがせいぜいの試合だった。

 厳しい戦いを乗り越えたユーベに、安堵の時はない。ダービーから4日後にヨーロッパリーグ(EL)のトラブゾンスポル戦(決勝トーナメント2回戦・第2レグ)があり、さらにその2日後にミラン戦が控えている。トラブゾンスポルには第1レグで先勝(2-0)し、第2レグは負けなければいいとはいえ、遠征でもあり、油断は禁物だ。おそらくコンテ監督は、ミラン戦を見据えて大幅なターンオーバーを採るはずである。

 厳しい2試合が続いたセリエAの合間にELが挟まるというタフな日程で、試されるのはチームの総力だ。ユーベがプライオリティーを置いているのは、やはり2連覇中のスクデットの防衛だ。とはいえ、決勝の舞台が本拠地ユベントス・スタジアムのELも、みすみす逃すには惜しいタイトルである。

 いずれにせよ、この難所を乗り切るためにも、コンテはなお一層ハードな練習を選手に課し、モチベーションの喚起に努めるだろう。シーズン終盤の勝負どころを迎えるにあたっても、指揮官のスタンスに変化はない。

【記者】
Romeo AGRESTI
ロメオ・アグレスティ
1989年トリノ生まれ。著名ジャーナリストで、『ワールドサッカーダイジェスト』誌の連載でもお馴染みのジャンカルロ・パドバンが主宰する雑誌「カルチョGP」で研鑽を積み、現在は『Goal.com』のユベントス番として密着取材。クラブの専門チャンネル『ユベントスTV』にもコメンテーターとして出演する。

【翻訳】
神尾光臣
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