自分は何ができて、何ができないかを知る良い機会だ。
2008年から始まった東京国際ユース(U-14)サッカー大会が、5月2日から行なわれる。今年はJリーグ選抜のほか、昨季覇者のボカ・ジュニアーズやアンデルレヒトが参戦。今大会で鎬を削る若者たちへ、元日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏から激励メッセージが届いた。
取材・文●木ノ原旬望(スポーツジャーナリスト)
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12歳から14歳の時期は、多くのことを吸収できる大事な時期だ。子どもは情報を吸収する能力、新しいことや変化に適応する柔軟性が高いが、サッカーではその点がこの年代で最も効果的に発揮され、多くを身につけられる。だが、この時期を逃すと15歳や16歳ではもう遅い。そこが12歳から14歳が「黄金年代」と呼ばれるゆえんだ。
この時期に選手の成長に最も重要なのは、最大限の経験を与えることだ。その点で今回の国際大会は、スキル、戦術、フィジカルなどの面でインパクトのある経験を選手に与えられる。
同年代の異なる国の選手たちとの対戦を通して、自分は何ができて、何ができないか。それを知る、とても良い機会だ。サッカーは世界的スポーツだが、地域によって違いがある。アフリカや南米、ヨーロッパなど異なる地域で違ったタイプのプレーや考え方に触れ、選手たちは多くのことに気づける。
そのため、日本サッカー協会の協力の下、ユース年代の国際大会などを増やすのは有効な手段だろう。日本人の技術や規律、団結力や傾聴力は、私が日本代表監督を務めている頃から素晴らしかった。世界トップレベルだからこそ、この年代の選手の成長と日本サッカーの将来のために、ユース年代の国際経験は必要不可欠だ。
しかし、単に触れるだけは十分ではない。あらゆる種類の情報を選手たちに与えて、彼らの反応を的確に掴み、それを選手にフィードバックすることが最も大事なプロセスだ。それは指揮官の重要な役目で、分析力がモノを言う。正しいアプローチをすれば選手も大きく伸びるだけに、指導者の国際的な知識や経験が多いほど、より多くの情報を与えて、解決につなげられる。
昨今では、日本人のユース年代の選手が欧州クラブに入るケースも出てきたが、まだ稀である。また、日本人の指導者が欧州のクラブで仕事をするケースも少ない。将来の日本サッカーを担う「黄金年代」の選手を分析して正しいフィードバックを行なうために、指導者も国際経験値を上げるべきだ。特に日本はより積極的に海外と接して情報と経験を増やさなければ、世界から取り残される。
日本人が海外へ出るのが難しければ、海外から外国人指導者を日本のユース年代の指導に招く手段もある。日本には実行力に優れた監督が多いが、一方で日本ならではの社会慣習や組織的要素の強さもある。そのことは私自身、日本の生活を通して認識している。
だが、海外指導者には縛りがないので、彼らが違いや必要なことを明確に示して注目を集め、慣習に風穴を開けられる。彼らの異なる視点や手法で、向上のために必要な国際レベルを意識したものに、切り替えられるだろう。
ユース選手へのアプローチも然り。まず、12~14歳の選手たちの自由なプレーを妨げてはならない。日本の場合、選手個々の力より、チームという組織を重視する傾向がある。確かにチームワークは大切だが、そればかりでは結果は出ない。個性が大事だ。望ましいチームのバランスは、全体の6~7割が組織で、個が残り3割を占めるように変わってきた。
時にわがままのように見えるプレーも、その選手のユニークな特長と捉えられる。それを励まして個性が伸びる。選手にポテンシャルを感じるなら、特にこの時期の選手には、一見わがままに見えるプレーも、認めることが選手を伸ばす鍵になる。
例えば、アフリカや欧州の選手などは、ひとつのことを試みて、3~4回失敗しても諦めずに取り組んで成功する。日本の指導者には、選手たちにその取り組みができる雰囲気を作ってほしいし、選手も挑戦を続けてもらいたい。
大切なのは自分を信じてプレーすることだ。日本人には日本人の良さがある。引っ込み思案で恥ずかしがるのは止めて、我々はできるという強い気持ちで挑戦してほしい。きっと道は拓ける。
PROFILE
フィリップ・トルシエ
元日本代表監督
1955年3月21日生まれ、フランス出身。現役時代はDFで、指導者に転身後はコートジボワール代表監督などを歴任。98~02年まで率いた日本代表ではアンダー世代のチームも指揮し、99年のワールドユースで準優勝に導く。02年の日韓ワールドカップで日本史上初のベスト16入りを成し遂げた後は、中国のクラブなどで監督を務めている。
■大会概要
【主催】
東京都
公益財団法人東京都スポーツ文化事業団
公益財団法人東京都サッカー協会
【日程】
5月2日(水)
1次ラウンド 11:00~ 駒沢/味スタ西
5月3日(木・祝)
1次ラウンド 10:30~ 駒沢/味スタ西
5月4日(金・祝)
2次ラウンド 10:00~ 駒沢
5月5日(土・祝)
2次ラウンド&表彰式・閉会式
9:30~(決勝戦 15:00~) 駒沢
※試合時間は変更になる可能性があります。
予めご了承ください。
【会場】
駒沢オリンピック公園総合運動場
味の素スタジアム西競技場
(1次ラウンド一部の試合のみ)
【参加都市(チーム)】
北京、ベルリン、カイロ、ジャカルタ、モスクワ、ニューサウスウェールズ、サンパウロ、ソウル、ブエノスアイレス、ブリュッセル、岩手、宮城、福島、茨城、Jリーグ選抜、東京(トレセン選抜、中体連選抜、FC東京、東京ヴェルディ、FC町田ゼルビア)
※参加都市・参加チームは変更になる場合がございます。
予めご了承ください。
■大会の詳細は公式ホームページへ
http://www.tokyo-u14.com/
取材・文●木ノ原旬望(スポーツジャーナリスト)
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12歳から14歳の時期は、多くのことを吸収できる大事な時期だ。子どもは情報を吸収する能力、新しいことや変化に適応する柔軟性が高いが、サッカーではその点がこの年代で最も効果的に発揮され、多くを身につけられる。だが、この時期を逃すと15歳や16歳ではもう遅い。そこが12歳から14歳が「黄金年代」と呼ばれるゆえんだ。
この時期に選手の成長に最も重要なのは、最大限の経験を与えることだ。その点で今回の国際大会は、スキル、戦術、フィジカルなどの面でインパクトのある経験を選手に与えられる。
同年代の異なる国の選手たちとの対戦を通して、自分は何ができて、何ができないか。それを知る、とても良い機会だ。サッカーは世界的スポーツだが、地域によって違いがある。アフリカや南米、ヨーロッパなど異なる地域で違ったタイプのプレーや考え方に触れ、選手たちは多くのことに気づける。
そのため、日本サッカー協会の協力の下、ユース年代の国際大会などを増やすのは有効な手段だろう。日本人の技術や規律、団結力や傾聴力は、私が日本代表監督を務めている頃から素晴らしかった。世界トップレベルだからこそ、この年代の選手の成長と日本サッカーの将来のために、ユース年代の国際経験は必要不可欠だ。
しかし、単に触れるだけは十分ではない。あらゆる種類の情報を選手たちに与えて、彼らの反応を的確に掴み、それを選手にフィードバックすることが最も大事なプロセスだ。それは指揮官の重要な役目で、分析力がモノを言う。正しいアプローチをすれば選手も大きく伸びるだけに、指導者の国際的な知識や経験が多いほど、より多くの情報を与えて、解決につなげられる。
昨今では、日本人のユース年代の選手が欧州クラブに入るケースも出てきたが、まだ稀である。また、日本人の指導者が欧州のクラブで仕事をするケースも少ない。将来の日本サッカーを担う「黄金年代」の選手を分析して正しいフィードバックを行なうために、指導者も国際経験値を上げるべきだ。特に日本はより積極的に海外と接して情報と経験を増やさなければ、世界から取り残される。
日本人が海外へ出るのが難しければ、海外から外国人指導者を日本のユース年代の指導に招く手段もある。日本には実行力に優れた監督が多いが、一方で日本ならではの社会慣習や組織的要素の強さもある。そのことは私自身、日本の生活を通して認識している。
だが、海外指導者には縛りがないので、彼らが違いや必要なことを明確に示して注目を集め、慣習に風穴を開けられる。彼らの異なる視点や手法で、向上のために必要な国際レベルを意識したものに、切り替えられるだろう。
ユース選手へのアプローチも然り。まず、12~14歳の選手たちの自由なプレーを妨げてはならない。日本の場合、選手個々の力より、チームという組織を重視する傾向がある。確かにチームワークは大切だが、そればかりでは結果は出ない。個性が大事だ。望ましいチームのバランスは、全体の6~7割が組織で、個が残り3割を占めるように変わってきた。
時にわがままのように見えるプレーも、その選手のユニークな特長と捉えられる。それを励まして個性が伸びる。選手にポテンシャルを感じるなら、特にこの時期の選手には、一見わがままに見えるプレーも、認めることが選手を伸ばす鍵になる。
例えば、アフリカや欧州の選手などは、ひとつのことを試みて、3~4回失敗しても諦めずに取り組んで成功する。日本の指導者には、選手たちにその取り組みができる雰囲気を作ってほしいし、選手も挑戦を続けてもらいたい。
大切なのは自分を信じてプレーすることだ。日本人には日本人の良さがある。引っ込み思案で恥ずかしがるのは止めて、我々はできるという強い気持ちで挑戦してほしい。きっと道は拓ける。
PROFILE
フィリップ・トルシエ
元日本代表監督
1955年3月21日生まれ、フランス出身。現役時代はDFで、指導者に転身後はコートジボワール代表監督などを歴任。98~02年まで率いた日本代表ではアンダー世代のチームも指揮し、99年のワールドユースで準優勝に導く。02年の日韓ワールドカップで日本史上初のベスト16入りを成し遂げた後は、中国のクラブなどで監督を務めている。
■大会概要
【主催】
東京都
公益財団法人東京都スポーツ文化事業団
公益財団法人東京都サッカー協会
【日程】
5月2日(水)
1次ラウンド 11:00~ 駒沢/味スタ西
5月3日(木・祝)
1次ラウンド 10:30~ 駒沢/味スタ西
5月4日(金・祝)
2次ラウンド 10:00~ 駒沢
5月5日(土・祝)
2次ラウンド&表彰式・閉会式
9:30~(決勝戦 15:00~) 駒沢
※試合時間は変更になる可能性があります。
予めご了承ください。
【会場】
駒沢オリンピック公園総合運動場
味の素スタジアム西競技場
(1次ラウンド一部の試合のみ)
【参加都市(チーム)】
北京、ベルリン、カイロ、ジャカルタ、モスクワ、ニューサウスウェールズ、サンパウロ、ソウル、ブエノスアイレス、ブリュッセル、岩手、宮城、福島、茨城、Jリーグ選抜、東京(トレセン選抜、中体連選抜、FC東京、東京ヴェルディ、FC町田ゼルビア)
※参加都市・参加チームは変更になる場合がございます。
予めご了承ください。
■大会の詳細は公式ホームページへ
http://www.tokyo-u14.com/