いよいよ開幕が迫ったブラジル・ワールドカップ。覇権を争う、いわゆる列強国は、どのような状態で大会を迎えようとしているのか。８つのポイントから現状を診断した。
 
　今回は、世界最高クラスのストライカー、クリスチアーノ・ロナウドを擁するポルトガルだ。P・ベント監督が掲げるポゼッションサッカーは完成の域に達しつつあるが、チームをつぶさに見てきた番記者の目にはどのように映っているのだろうか。
 
【ポルトガル】
前回大会：ベスト16
今大会初戦：６月16日　ドイツ戦（グループG）


Q1　23人の人選は？
 
可もなく不可もなく
 
　私にとって最大の驚きはリカルド・カレスマが選ばれなかったことだ。ポルトガル代表番の記者仲間のほとんどが彼の招集を予想しており、落選は意外だった。これはマイナスだと思う。なぜなら、現時点ではカレスマほど局面を打開できるウイングはいないから。ナニのコンディションは良くないし、先発を任せられるレベルにはない。拮抗した試合で、「カレスマがいれば……」と思う場面が訪れるかもしれない。
 
 
Q2　チームの仕上がり具合は？
 
まずまず
 
「上々」としたいところだが、「まずまず」にしたのは、クリスチアーノ・ロナウドとペペというチームの中核のコンディションがいまひとつだから。このポルトガル代表において、ふたりは代えの利かない存在だ。現状では初戦のドイツ戦に間に合うかどうかは分からない。ロナウドは私の友人でもある個人トレーナーのガスパールが、つきっきりで回復に努めており、個人的には間に合うと踏んでいるが、ペペは未知数だ。
 
Q3　キャンプインからここまでチームの雰囲気は？
 
最高
 
　合宿の全体的な雰囲気はいい。唯一のネガティブな点は、ロナウドとペペが100パーセントの状態でチーム練習に参加できていない点だが、それを除けばパウロ・ベント監督は着々と準備を進めており、ドイツ戦に向けてチームの士気は高まるばかりだ。
 
　ロナウド、ペペ、ファビオ・コエントランというレアル・マドリーの３選手がCLで優勝したことも大きかった。彼らは各ポジションの中核でもあり、攻守に欠かせない存在だ。そんな選手たちが全体にポジティブな空気を持ち込んでいるように思う。
 
Q4　最大の楽観材料は？
 
チームの結束力、若手の伸び
 
　P・ベント監督がチームをひとつにまとめている点だろう。４年前はチームが分裂しかけたが、組織と規律を重視するP・ベント監督はいい形でチームを作ってきた。カレスマを外したのも、規律面で問題を抱えると考えたから。タレントを捨ててまで組織を重視したため、現チームは結束している。そう簡単に崩れはしないだろう。
 
　若手が伸びているのも大きい。特にボランチのウィリアム・カルバリョは、同じポジションだった指揮官が高く評価しており、先発に食い込んでいく可能性もある。
 
Q5）　最大の懸念は？
 
C・ロナウドのコンディション
 
　前述のように、ロナウドの状態だ。そしてそれは、エース抜きの攻撃は機能しない、という現代表の問題点を浮き彫りにしている。ロナウドは絶対的な存在であるがゆえ、不在時の攻撃は威力が半減してしまう。予選プレーオフのスウェーデン戦でも見せたように、ロナウドは大一番では常に実力以上の力を発揮するため、ドイツとの初戦への期待も高まっていた。そこに負傷のニュースが飛びこんできたわけだ。ポルトガルの今大会は、ロナウドのコンディションにかかっていると言ってもいい。