FAカップ王者としてプレミアリーグ王者に挑んだアーセナルは、立ち上がりから試合を優位に進めた。しかし、無得点で前半を折り返すと、後半キックオフ直後の46分にCKの流れからヴィクター・モーゼスに押し込まれ、チェルシーに先手を取られてしまう。
その後、猛攻を仕掛けながらチェルシーの牙城を崩せなかったアーセナルに転機が訪れたのは、試合終了が迫る80分だった。相手FWのペドロ・ロドリゲスがモハメド・エルネニーに背後からタックルを見舞って、一発退場となったのだ。
これで数的優位となったアーセナルは直後の82分に同点とする。グラニト・ジャカの蹴ったボールを、今夏にシャルケから獲得した新戦力セアド・コラシナツが頭で合わせてネットを揺らした。
アーセナルが土壇場で追いついた試合は、延長戦には入らず、そのままPK戦へ突入。ここで公式戦では初めて「ABBA方式」が採用された。
Aチームが先に1人蹴った後にBチームが2人続けて蹴り、その後はAチームが2人続けて蹴るというルールの下で行なわれたPK戦は、チェルシーが先攻で、1人目のガリー・ケイヒルが成功。次はアーセナルが1人目セオ・ウォルコット、2人目ナチョ・モンレアルが連続で成功した。
次はチェルシーが連続で蹴るも、2人目ティボー・クルトワ、3人目アルバロ・モラタがともに枠を外してしまう。一方のアーセナルは3人目アレックス・チェンバレン、4人目オリビエ・ジルーが成功し、見事4-1でPK戦を制して15度目の戴冠を果たした。
試合後、アーセナルの指揮官アーセン・ヴェンゲルは、「決してフレンドリーマッチのような試合ではなかった。とてもインテンシティーの高いものだった」と、宿敵との試合を振り返って、さらに次のように続けている。
「後半の立ち上がりに難しい時間帯を迎えたが、その後、我々は試合を支配し続けた。今日の我々は常に危険だったと思うね」
昨シーズンはプレミアリーグ5位に終わり、優勝はおろか19年獲得し続けていたチャンピオンズ・リーグ出場権も失ったアーセナル。一部のファンがヴェンゲルの解任要求の抗議デモも開くなど、チーム状況は決して芳しくはなかった。
そんななか、ヴェンゲルはシーズン終了後の5月31日に2年間の契約延長を締結した。逆風の中、就任21周年を迎えるフランス人指揮官は、コミュニティシールド後、自軍のファンに対して次のような言葉を送っている。
「ファンを幸せにするというのが私たちの夢だ。だが、それは難しい夢でもある。だけどアーセナルはそれに一生懸命取り組むよ。我々は良い時も、悪い時も経験するかもしれないが、彼らにはチームを後ろから支えていてほしい。彼らとは団結し、一体となってシーズンを送りたい」
はたして、ヴェンゲルの声はファンの耳に届くのか? 注目のアーセナルの開幕戦は8月11日、本拠地エミレーツ・スタジアムにレスターを迎え入れて行なわれる。
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