僕が親しくしているスポーツ心理学博士で、メンタルトレーナーの先生がドキッとする数字を言った。
「101パーセント」。
　
120パーセントや150パーセントの力を出さなくても良い。自分の持った「力」が100として100を出し切るのも大変、だから101パーセント、プラス１パーセントで良いのだと。
 
「120パーセントの力を出せ」と言われたら、途轍もなく大変なように思えるが、101パーセントならば、とても現実的であり、極端なことを言えば100パーセントを出すことさえも難しいのだから本当に分かりやすい、頑張れる数字なのである。
 
　試合や本番であれば120パーセントを出さないと勝てない、上に行けないといったような状況はあるのかもしれないが、この101パーセントは毎日のトレーニングでしっかり自分の力を出し切るという意味から、その先生が現実的な数字として口にしたのだった。
 
　私事だが、僕はトレーニングでの集中力とモチベーションをきっと、すごく強く要求、追求する監督だと思う。イヤ、監督でなかったとしてもそういう人間だと思う。
 
　練習は試合のためにある。常に自分の力を出し切らなくても試合に100パーセント以上の力を発揮できればそれで良い。
 
　その通りだ。僕もその舞台で生きた。現役時代、選手とはそういうものだ。
 
　しかし、選手時代も今もトレーニングへの拘りは常に意識している。成長するためにはトレーニングは大切であり、重要なことなのだ。
 
　そこで、この１パーセントの凄さをここで説明したい。毎日、101パーセントを意識して取り組んだ人間と、99パーセントで取り組んだ人間の差はどうなるか。“たった”かもしれないが、この２パーセントにどれだけの差があるのか。
 
　僕はこれを、教師をしている友人の同僚の数学の先生に、数字で出してもらった。その答えを紹介しよう。
 
　101パーセントを365日続けると、101パーセントの365乗という計算式が成り立つ。
 
　一方、１パーセントだけ手を抜くことを365日続けると、99パーセントの365乗という計算式となる。
 
　自分の力よりちょっとでも無理する奴と、ちょっとだけ手を抜く奴との差を計算立てた。あくまで数字の話だが……。
 
　それが単純な差ではなかったのだ。
１）99パーセントの365日
100パーセントを１と仮定します。
99パーセントは0.99です。
365乗すると
0.0255…
 
２）101パーセントの365日
100パーセントを１と仮定します。
101パーセントは1.01ですから
365乗すると…
37.7834…
 
何倍の差になるのかを計算すると
37.7834… ÷ 0.0255…
≒1480.66…
 
　つまり１年で約1480倍の差になるわけだ。
 
　例えばこれは、チーム内で自分の力以上のものを出す選手と、少しだけ手を抜く選手の差となって表われる。また、チーム全体としてそのように取り組んだチームと、そうでないチームの差は詰まったり、開いたりという形となって表われてくるのである。
 
　選手自身がサボれば、チーム自体がサボれば、クラブそのものがサボればどうなるか――。1,400倍ものエネルギーで迫り来る突き上げに、すぐにも大きなクラブは下を見ることになり、小さなクラブが這い上がる。あるいは逆に、大きなクラブがより大きくなり、小さなクラブはいつまでもたっても上に昇ることが出来ない。
 
　まさに「101パーセントの奇跡」と言えるだろう。
 
　常に自分の力より１パーセント上を意識して――。
 
2016年11月１日
三浦泰年