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“プレーモデルの確立”はほぼ奇跡「“プレーを知る”というのは容易いことではない」【コラム】

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2025年12月25日

「トレーニングをしなければ忘れる」

プレーモデルを植え付ける手腕は天下一品のグアルディオラ監督。(C)Getty Images

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 世界トップのクラブには、クラブとしてのカラー=プレーモデルがある。FCバルセロナ、レアル・マドリー、アトレティコ・マドリー、アーセナル、リバプール、マンチェスター・シティ、バイエルン・ミュンヘン、ボルシア・ドルトムント、インテル・ミラノなどは時代を超え、いずれもクラブとしての戦い方をイメージできるはずだ。

 そのプレーモデルは、勝利を重ねることによって確立したものと言える。しかしコンセプトがなかったら、そのゴールは望めない。鶏が先か、卵が先か。つまり、その中身こそが問われる。

「トレーニングをしなければ忘れる。当然のことだ」

 これはマンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督の言葉だが、どんなコンセプトも、正しいトレーニングを繰り返すことでしか定着しないのだろう。理想的なプレーを習慣化させることで、考えるよりも脳と肉体が反応するのだ。

 しかし、戦術的な連動を確かめるだけでは十分ではない。技術的なトレーニングも同時に施す必要があるだろう。パスが正確なだけではなく、強いグラウンダーのパスを打ち込めるか、どちらの足下につけるのか、あるいは虚を突くように柔らかいパスが出せるか。あるいは、ボールを運ぶドリブルで相手を引きつけられるか、リズムの変化でマークをはがせるか。
 
 とことん突き詰めたとしても、最終的には選手の資質に拠るところも大きい。

「私は自分のチームが、やるべきことをきちんとできることを望む。やるべきことを知ることで、よく攻め、よく守れるように導ける。それには、“プレーを知る”選手を見つけ出すことだ」

 そう説明しているのは、歴戦の指揮官であるジュレン・ロペテギである。

「選手は、『言われなくても求められるプレーは理解している』と思うだろう。でも、大概はそうではない。これは選手だった頃の私も含めてのことだが、“プレーを知る”というのは容易いことではない。あらゆる異なる局面で、相応の解決策を施すというのは簡単ではない。それだけ選手のインテリジェンスが問われるんだよ」

結局のところ、どれだけクラブがコンセプトを明確にし、有力な指揮官が仕事をしても、相応する知的な選手が揃わないと、プレーモデルは成り立たない。そもそもプレーモデルは、図面や設計図に過ぎないのである。選手こそが、そのコンセプトを立体化するのだ。

〈プレーモデルの確立〉

それは、ほとんど奇跡と言えるのかもしれない。しかし、それに挑むことこそが、フットボールの面白さであるのだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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