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“史上最強”の日本代表には「特級選手」はいない。少しでも胡坐をかいたら痛い目に…【コラム】

カテゴリ:日本代表

小宮良之

2025年12月23日

これだけの質と量の海外組が存在したことはない

欧州で活躍する選手をずらりと揃えた日本代表。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 日本サッカー界は、かつてない興隆を見せている。2026年北中米ワールドカップに向けては、初めてポット2に入った。控え目に言って、これは小さな快挙だろう。

 たった30年ほど前、日本代表は本大会に出場するだけでも四苦八苦していた。「ドーハの悲劇」を糧にすることで、1998年フランスW杯にどうにか初出場したが、本大会では完全なアンダードッグだった。そこから一気に強化が進み、Jリーグ発足で台頭した黄金世代が主力になった2002年日韓W杯で、ベスト16の歓喜を巻き起こした。2006年ドイツW杯ではグループリーグ敗退で、甘さを突き付けられたわけだが...。

 そこからの20年で多くの選手が海を越え、欧州で足跡を刻んでいった。長谷部誠はまさに礎と言える。さらに多くの選手が後を辿って挑戦を続け、流れを生み出した。今や欧州のどの国にも日本人選手を見かけるほどだ。

 単純に、海外で助っ人として主力になることは、国内のJリーグで活躍するのとは比較にならない。重圧と責務を触媒に、欧州組は進化を遂げる。今や欧州組だけで80人前後で、代表を構成できる。それこそ日本代表が「史上最強」と謳われる理由で、これだけの質と量の海外組が存在したことはない。

 ただ、少しでも最強に胡坐をかいたら痛い目に遭うだろう。

 日本代表選手には“特級選手”はいない。スペインのペドリ、ラミネ・ヤマル、フランスのキリアン・エムバペ、ウスマンヌ・デンベレ、アルゼンチンのリオネル・メッシ、フリアン・アルバレス、ブラジルのラフィーニャ、ポルトガルのヴィティーニャ、オランダのフィルジル・ファン・ダイク、ベルギーのティボー・クルトワ、ノルウェーのアーリング・ハーランドなどの領域には至っていないのだ。

 世界最高峰チャンピオンズリーグ(CL)で優勝を狙うクラブの主力レベルと言い換えられるか。
 
 遠藤航(リバプール)、伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン)、高井幸大(トッテナム)はCL組だが、ケガなどもあるが出場機会も限られている。守田英正(スポルティング・リスボン)も、今シーズンのCLは一回も先発がない。堂安律(フランクフルト)はエース格だが、チームはCLでは苦境で、先日もバルサ戦は手も足も出なかった。

 CLノックアウトフェーズプレーオフ進出を狙える状況にあるASモナコの南野拓実は、今シーズンの欧州日本人選手MVPと言える。攻撃の流れを生み出し、リーグ・アンでも欧州王者パリ・サンジェルマン戦で決勝点を決めているが、左膝に大怪我を負ってしまった。

 CLの一つ下になるヨーロッパリーグでは、セルティック、フェイエノールトに日本人選手たちが複数いるが、どちらも状況は厳しい。セルティックは前田大然がスコットランドリーグでMVPでも、ASローマ戦では何もできなかった。フェイエノールトの上田綺世はオランダで得点量産は素晴らしいし、セルティック戦もゴールを決めたが、チームはELも敗退危機だ。

 久保建英(レアル・ソシエダ)、三笘薫(ブライトン)、鎌田大地(クリスタル・パレス)もケガやチームの不振で波が激しく―――。2026年W杯は、史上最強軍団でどう戦うか。その兵法が問われるべきだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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