清水戦は後半にまさかの失速
[J1第34節]川崎 5-3 清水/10月18日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu
試合後の表情は、勝者のモノには見えなかった。
清水をホームに迎えた一戦、川崎は大逆転負けで敗退したルヴァンカップの準決勝・第2戦の柏戦の悔しさをぶつけるかのように、13分までに3ゴールを奪い、37分にも加点。清水の後手に回る守備対応はあったにせよ、前半のうちに4点のリードを得る素晴らしいゲームを見せた。
だが、である。前半のうちに3-4-2-1から4バックに変えた清水に対し、前半のアディショナルタイムに1点を返されると、後半立ち上がりの1分にも失点。60分のGK山口瑠伊のPKセーブや、69分の河原創のゴールがなければどうなっていたか分からない流れで、結果的には後半アディショナルタイムに2度目のPKを今度は決められ、5-3で逃げ切る形となった。
6日前のショッキングなルヴァンカップの敗退後、勝てたのはポジティブな面も、点は取れるが、失点も重ねる。まさに今の川崎を象徴するようなゲームになったのだから、選手たちに笑顔が少なかったのも当たり前である。
今季就任の長谷部茂利監督も振り返る。
「入りから、立て続けに得点を取ることができ、危ない場面もたくさんはなかったと思うので、非常に良いゲームを途中までできたと思います。前半最後に失点し、後半の最初に失点し、ゲームの流れがオープンと言いますか、どっちになってもおかしくないような、勝敗は最初に2点、3点を取った我々が取りましたが、内容、流れという意味では、私自身は素直に喜べない。得点は取れましたが、失点が多すぎる。そういう風に反省しているところです」
そして指揮官はこうも続けた。
「(清水は前半のうちに3-4-2-1から)自由に動く選手、なんでもできる選手である乾(貴士)選手がいて(シャドーからトップ下へ)4-2-3-1に、そしてハーフタイムに選手を変えて、前半の終盤と後半の入りのところが、相手は完全に4-4-2に形を変えて、より積極的にという形でした。気付いていましたし、もちろんコーチとのやり取りを含め選手も分かっていました。そこで後半始まってすぐに失点している。相手のパスから上手いこと崩されたというかシュートレンジに持ってこられた。
あの時間帯で、ああいうプレーはあってはならない。そういう見方をしています」
得点数はリーグトップの「65」を誇る一方、失点は下から6番目に多い「48」を数える(10月18日時点)。4試合を残し、昨季の「66得点・57失点」よりは数字は改善される見込みだろうが、守備組織の構築に定評のある長谷部監督を招聘した今季、シーズン序盤は指揮官が目指す複数得点&無失点ゲームをACLエリートを含め少しずつ表現できている印象であったが、シーズン終盤に差し掛かった今、なぜここまでディフェンスの乱れが生じるようになってしまったのか。
試合状況や対戦相手によっても変わるため、これという明確な理由を挙げるのは難しいが、複数の背景はある。
まず最終ラインの軸に成長していたCB高井幸大が夏に欧州挑戦を選択し、その高井をそつなくカバーしていた丸山祐市が右膝に重傷を負い、レギュラーCBふたりを欠いて後半戦を戦っていること。さらに所属11年目の車屋紳太郎も欠場が続き、今季は右SBを主にしていた佐々木旭をCBにスライドし、夏の新戦力のフィリップ・ウレモヴィッチ、怪我明けのジェジエウらと組ませて後半に臨んでいるが、SBも三浦颯太が負傷するなど、ACLエリートを戦った疲労もあって苦しい台所事情を強いられているのだ。
試合後の表情は、勝者のモノには見えなかった。
清水をホームに迎えた一戦、川崎は大逆転負けで敗退したルヴァンカップの準決勝・第2戦の柏戦の悔しさをぶつけるかのように、13分までに3ゴールを奪い、37分にも加点。清水の後手に回る守備対応はあったにせよ、前半のうちに4点のリードを得る素晴らしいゲームを見せた。
だが、である。前半のうちに3-4-2-1から4バックに変えた清水に対し、前半のアディショナルタイムに1点を返されると、後半立ち上がりの1分にも失点。60分のGK山口瑠伊のPKセーブや、69分の河原創のゴールがなければどうなっていたか分からない流れで、結果的には後半アディショナルタイムに2度目のPKを今度は決められ、5-3で逃げ切る形となった。
6日前のショッキングなルヴァンカップの敗退後、勝てたのはポジティブな面も、点は取れるが、失点も重ねる。まさに今の川崎を象徴するようなゲームになったのだから、選手たちに笑顔が少なかったのも当たり前である。
今季就任の長谷部茂利監督も振り返る。
「入りから、立て続けに得点を取ることができ、危ない場面もたくさんはなかったと思うので、非常に良いゲームを途中までできたと思います。前半最後に失点し、後半の最初に失点し、ゲームの流れがオープンと言いますか、どっちになってもおかしくないような、勝敗は最初に2点、3点を取った我々が取りましたが、内容、流れという意味では、私自身は素直に喜べない。得点は取れましたが、失点が多すぎる。そういう風に反省しているところです」
そして指揮官はこうも続けた。
「(清水は前半のうちに3-4-2-1から)自由に動く選手、なんでもできる選手である乾(貴士)選手がいて(シャドーからトップ下へ)4-2-3-1に、そしてハーフタイムに選手を変えて、前半の終盤と後半の入りのところが、相手は完全に4-4-2に形を変えて、より積極的にという形でした。気付いていましたし、もちろんコーチとのやり取りを含め選手も分かっていました。そこで後半始まってすぐに失点している。相手のパスから上手いこと崩されたというかシュートレンジに持ってこられた。
あの時間帯で、ああいうプレーはあってはならない。そういう見方をしています」
得点数はリーグトップの「65」を誇る一方、失点は下から6番目に多い「48」を数える(10月18日時点)。4試合を残し、昨季の「66得点・57失点」よりは数字は改善される見込みだろうが、守備組織の構築に定評のある長谷部監督を招聘した今季、シーズン序盤は指揮官が目指す複数得点&無失点ゲームをACLエリートを含め少しずつ表現できている印象であったが、シーズン終盤に差し掛かった今、なぜここまでディフェンスの乱れが生じるようになってしまったのか。
試合状況や対戦相手によっても変わるため、これという明確な理由を挙げるのは難しいが、複数の背景はある。
まず最終ラインの軸に成長していたCB高井幸大が夏に欧州挑戦を選択し、その高井をそつなくカバーしていた丸山祐市が右膝に重傷を負い、レギュラーCBふたりを欠いて後半戦を戦っていること。さらに所属11年目の車屋紳太郎も欠場が続き、今季は右SBを主にしていた佐々木旭をCBにスライドし、夏の新戦力のフィリップ・ウレモヴィッチ、怪我明けのジェジエウらと組ませて後半に臨んでいるが、SBも三浦颯太が負傷するなど、ACLエリートを戦った疲労もあって苦しい台所事情を強いられているのだ。

前半は一気呵成に4ゴール。さすがの得点力を見せた。(C)SOCCER DIGEST

後半には試合前にJ1通算100試合出場を祝ってもらった河原にもゴールが生まれたが、押し込まれる時間が続いた。(C)SOCCER DIGEST
また、前述のように相手がやり方を変えてきたなかで、上手く対応できない課題もある。後半は相手の攻撃を受け続ける試合が最近は続いており、清水戦後にかなり険しい表情を浮かべていたボランチの山本悠樹も改めて語る。
「(直近の)レイソル戦も含めて、ゲームの途中で相手がやり方を変えた時に、個人で気付いて動きを変えられるか。僕自身もそうですし、気付いたら僕も伝える力がすごく必要だと思います、気付いて動きを変えられる選手の能力がすごくチームとして足りないかなと思いますし、監督もそうやって分かりやすく提示していただいたなかで、(相手が4-4-2になった後半)最初の立ち上がりで、ファーストが緩くなるとか、自分のマーカーに当たり前のように前を向かれるとか、ちょっとあの失点(後半立ち上がりの失点)で流れを持っていかれた感じはしたので、課題だらけです」
さらに、前線のエリソン、マルシーニョ、伊藤達哉らタレントの“個”の力を活かす、カウンターやショートカウンターなど素早い展開が今季の武器で、リーグトップの得点数の根源にもなっているが、攻め方のレパートリーが限られている点が、試合運びの拙さにもつながっているのかもしれない。
ルヴァンカップの準決勝・第2戦の後に佐々木は「自分たちがもっとボールを握るとか一人ひとりがボールを欲しがるとか、勇気を持って運ぶとか、そういうことをやっていかないと、ずっと相手ボールで守備をしていて、そういう状況では少し難しいゲームになってしまいます。自分たちの良さを出していかないといけないなと感じました」と話し、清水戦後、山本も指摘した。
「相手の圧力や風の向きだったり、(清水戦も後半に)押し込まれる要因はありましたが、(佐々木)旭も言っていましたが、勇気を持ってボールを運ぶとか、前を選択するとか、自分の判断のなかで前向きなプレーを選ぶとか、そこらへんのメンタリティはまだ足りないと思いますし、そういう状況を打破できる自分自身の力のなさも感じるので、向き合ってやっていきたいです」
清水戦の後半、相手の激しいマークもあってか、フラストレーションを溜め、イエローカードも受けていたCFエリソンを早々に下げ、ベテランFW小林悠を投入したが、小林も自身にベクトルを向けながら難しさを述懐した。
「難しかったとは感じます。(前線に)放り込むような状況だったので、それをなんとかしないといけないのが今のフロンターレのサッカーで、そこは自分の力不足だと思いますし、向き合っていくしかない。
(トップ下の脇坂泰斗とは)もっと握りたいという話をしていましたが、結構毎試合そうなんですが、後半になると持たれて押し込まれる展開が続いて、ロングボールを収めてというサッカーになっているので、そこは自分がもっとやらなくちゃいけなかったと思います。出ているメンバーでやり方を変えられたら良いと思うんですが、風もあって押し込まれる展開も続いたので、蹴って相手の陣地を変えるという展開だったので、もう少し自分が頑張ってマイボールにできたら良かったと感じています。
顔を出してボールをもう一回大事にするじゃないですが、相手に渡してしまうと相手のリズムになってしまうので、そこはショートパスでしっかりマイボールの時間を作るのか、今日みたいにロングボールで僕が収められれば良かったですが、そうやって自分たちの時間を作ることが大事だと思うので、簡単に相手に渡してしまう状況が、後半のような展開になってしまうのかなと思います。リードしてから余裕を持ってボールを回せれば、もう少し試合を上手く運べそうな気がするんですが」
もっともフィジカルとスピードを活かして単騎でフィニッシュまで持っていけるエリソンと、周囲とのコンビネーションから一瞬の動き出しでゴールを奪う小林ではタイプが異なる。ここでも相手を見て、味方を見て、臨機応変な振る舞いが必要だったのだろう。
春先のACLエリートでは準優勝したが、天皇杯はJ3の相模原に黒星を喫し、ルヴァンカップは準決勝で敗退。そして首位の鹿島と残り4試合で勝点10差と、事実上、2年連続となる無冠が濃厚だ。その現実もどう見据え、チームとして前進していくのか。チームと苦楽をともにし、多くのタイトルを獲得してきた小林は自身の考えを教えてくれた。
「今はカウンターが武器になっていますし、得点力では一番取れています。ただ、優勝、タイトルを獲るチームはやっぱり失点が少ない。そういった意味では、攻撃を維持しつつ、試合の運び方というかチームとしてカウンター一辺倒ではなく、ボールを握って攻める時間を増やせたらもっとタイトルに近づけるかなとは思っています」
新たなチャレンジをしている川崎が今の経験をどう先につなげるか。大事なのは、これまで積み重ねてきたものと、今季の積み重ねをしっかり合わせていくことなのだろう。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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「(直近の)レイソル戦も含めて、ゲームの途中で相手がやり方を変えた時に、個人で気付いて動きを変えられるか。僕自身もそうですし、気付いたら僕も伝える力がすごく必要だと思います、気付いて動きを変えられる選手の能力がすごくチームとして足りないかなと思いますし、監督もそうやって分かりやすく提示していただいたなかで、(相手が4-4-2になった後半)最初の立ち上がりで、ファーストが緩くなるとか、自分のマーカーに当たり前のように前を向かれるとか、ちょっとあの失点(後半立ち上がりの失点)で流れを持っていかれた感じはしたので、課題だらけです」
さらに、前線のエリソン、マルシーニョ、伊藤達哉らタレントの“個”の力を活かす、カウンターやショートカウンターなど素早い展開が今季の武器で、リーグトップの得点数の根源にもなっているが、攻め方のレパートリーが限られている点が、試合運びの拙さにもつながっているのかもしれない。
ルヴァンカップの準決勝・第2戦の後に佐々木は「自分たちがもっとボールを握るとか一人ひとりがボールを欲しがるとか、勇気を持って運ぶとか、そういうことをやっていかないと、ずっと相手ボールで守備をしていて、そういう状況では少し難しいゲームになってしまいます。自分たちの良さを出していかないといけないなと感じました」と話し、清水戦後、山本も指摘した。
「相手の圧力や風の向きだったり、(清水戦も後半に)押し込まれる要因はありましたが、(佐々木)旭も言っていましたが、勇気を持ってボールを運ぶとか、前を選択するとか、自分の判断のなかで前向きなプレーを選ぶとか、そこらへんのメンタリティはまだ足りないと思いますし、そういう状況を打破できる自分自身の力のなさも感じるので、向き合ってやっていきたいです」
清水戦の後半、相手の激しいマークもあってか、フラストレーションを溜め、イエローカードも受けていたCFエリソンを早々に下げ、ベテランFW小林悠を投入したが、小林も自身にベクトルを向けながら難しさを述懐した。
「難しかったとは感じます。(前線に)放り込むような状況だったので、それをなんとかしないといけないのが今のフロンターレのサッカーで、そこは自分の力不足だと思いますし、向き合っていくしかない。
(トップ下の脇坂泰斗とは)もっと握りたいという話をしていましたが、結構毎試合そうなんですが、後半になると持たれて押し込まれる展開が続いて、ロングボールを収めてというサッカーになっているので、そこは自分がもっとやらなくちゃいけなかったと思います。出ているメンバーでやり方を変えられたら良いと思うんですが、風もあって押し込まれる展開も続いたので、蹴って相手の陣地を変えるという展開だったので、もう少し自分が頑張ってマイボールにできたら良かったと感じています。
顔を出してボールをもう一回大事にするじゃないですが、相手に渡してしまうと相手のリズムになってしまうので、そこはショートパスでしっかりマイボールの時間を作るのか、今日みたいにロングボールで僕が収められれば良かったですが、そうやって自分たちの時間を作ることが大事だと思うので、簡単に相手に渡してしまう状況が、後半のような展開になってしまうのかなと思います。リードしてから余裕を持ってボールを回せれば、もう少し試合を上手く運べそうな気がするんですが」
もっともフィジカルとスピードを活かして単騎でフィニッシュまで持っていけるエリソンと、周囲とのコンビネーションから一瞬の動き出しでゴールを奪う小林ではタイプが異なる。ここでも相手を見て、味方を見て、臨機応変な振る舞いが必要だったのだろう。
春先のACLエリートでは準優勝したが、天皇杯はJ3の相模原に黒星を喫し、ルヴァンカップは準決勝で敗退。そして首位の鹿島と残り4試合で勝点10差と、事実上、2年連続となる無冠が濃厚だ。その現実もどう見据え、チームとして前進していくのか。チームと苦楽をともにし、多くのタイトルを獲得してきた小林は自身の考えを教えてくれた。
「今はカウンターが武器になっていますし、得点力では一番取れています。ただ、優勝、タイトルを獲るチームはやっぱり失点が少ない。そういった意味では、攻撃を維持しつつ、試合の運び方というかチームとしてカウンター一辺倒ではなく、ボールを握って攻める時間を増やせたらもっとタイトルに近づけるかなとは思っています」
新たなチャレンジをしている川崎が今の経験をどう先につなげるか。大事なのは、これまで積み重ねてきたものと、今季の積み重ねをしっかり合わせていくことなのだろう。
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