ともに特長を示す
[J1第32節]川崎 4-4 柏/9月28日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu
決して明確に分けられるわけではないが、監督はよくリアリストとロマンチストに分類されることがある。現実主義タイプと詩人タイプと言い換えても良いのかもしれない。
リーグ優勝へ残りの試合での全勝を目指した7位の川崎と、4位の柏の一戦は、互いの特長がよく表われた点の取り合いとなった。今季就任したそれぞれの監督が自らの哲学をチームにしっかり落とし込んでいるからこその内容だったと言えるだろう。
川崎の長谷部茂利監督がよく語るのは“複数得点&無失点”で勝つことの重要性だ。現状でリーグ最多の59点を重ねる反面、44失点(リーグワースト7位)を喫しているが、ベースにあるのは組織的な守備で、川崎と言えば阿吽の呼吸でのパスワークであったが、今季は相手を引き込んでからのマルシーニョ、伊藤達哉らの個の力を活かしたカウンターが主な武器となっている。
柏戦も前からのプレスを軸にボールを奪ってからの素早い攻めで局面の打開を図った。自分たちの現状に合った“リアリスト”のような振る舞いと言えるだろう。
一方、“ロマンチスト”リカルド・ロドリゲス監督が目指すのは、ボールをしっかりつなぎ、システマチックに前進し、常にゴールを目指し続けるスタイルである。そのため相手にボールを引っかけられてからの失点も少なくなく、川崎戦でも早々にキャプテンの古賀太陽のパスミスからPKを奪われて先制を許している。
しかし、そこからの柏は実に素晴らしかった。川崎が狙った前からのプレスを美しく剥がし、何度も攻撃を構築。奪われれば即時奪還を狙い、川崎を“窒息”させた。前半のうちに2-1と逆転し、このまま柏のワンサイドゲームになるのではないかと思わせるほど、強さを示したのだ。
しかし、リカルド・ロドリゲス監督が「プレゼントしてしまったような」と指摘したように、前半アディショナルタイムに自分たちのCKからカウンターを許し、被弾。小泉佳穂が「老獪さが足りないと言いますか、難しいですが、気持ちよくサッカーをするのは良いのですが勝つためのプレー選択をチームとしてもやっていかなくてはいけない」と語ったように、攻撃的な姿勢は好感も、リスク管理は乏しかったと言わざるを得ないだろう。
すると後半は川崎のボランチ・山本悠樹が「後半は(ボランチの河原)創や(CBの佐々木)旭らと話し合いながらやられたくないところをしっかり締めながら上手くプレスをかけていった」と振り返ったように、川崎が2度のリードに成功した。
ただ、結局は試合終了間際の柏の三丸拡の目の覚めるような一発で柏が追い付き、川崎も逃げ切りに失敗。川崎としては試合をクローズする術、柏としては打たれ弱さという点に大きな課題を残したという内容であった。
決して明確に分けられるわけではないが、監督はよくリアリストとロマンチストに分類されることがある。現実主義タイプと詩人タイプと言い換えても良いのかもしれない。
リーグ優勝へ残りの試合での全勝を目指した7位の川崎と、4位の柏の一戦は、互いの特長がよく表われた点の取り合いとなった。今季就任したそれぞれの監督が自らの哲学をチームにしっかり落とし込んでいるからこその内容だったと言えるだろう。
川崎の長谷部茂利監督がよく語るのは“複数得点&無失点”で勝つことの重要性だ。現状でリーグ最多の59点を重ねる反面、44失点(リーグワースト7位)を喫しているが、ベースにあるのは組織的な守備で、川崎と言えば阿吽の呼吸でのパスワークであったが、今季は相手を引き込んでからのマルシーニョ、伊藤達哉らの個の力を活かしたカウンターが主な武器となっている。
柏戦も前からのプレスを軸にボールを奪ってからの素早い攻めで局面の打開を図った。自分たちの現状に合った“リアリスト”のような振る舞いと言えるだろう。
一方、“ロマンチスト”リカルド・ロドリゲス監督が目指すのは、ボールをしっかりつなぎ、システマチックに前進し、常にゴールを目指し続けるスタイルである。そのため相手にボールを引っかけられてからの失点も少なくなく、川崎戦でも早々にキャプテンの古賀太陽のパスミスからPKを奪われて先制を許している。
しかし、そこからの柏は実に素晴らしかった。川崎が狙った前からのプレスを美しく剥がし、何度も攻撃を構築。奪われれば即時奪還を狙い、川崎を“窒息”させた。前半のうちに2-1と逆転し、このまま柏のワンサイドゲームになるのではないかと思わせるほど、強さを示したのだ。
しかし、リカルド・ロドリゲス監督が「プレゼントしてしまったような」と指摘したように、前半アディショナルタイムに自分たちのCKからカウンターを許し、被弾。小泉佳穂が「老獪さが足りないと言いますか、難しいですが、気持ちよくサッカーをするのは良いのですが勝つためのプレー選択をチームとしてもやっていかなくてはいけない」と語ったように、攻撃的な姿勢は好感も、リスク管理は乏しかったと言わざるを得ないだろう。
すると後半は川崎のボランチ・山本悠樹が「後半は(ボランチの河原)創や(CBの佐々木)旭らと話し合いながらやられたくないところをしっかり締めながら上手くプレスをかけていった」と振り返ったように、川崎が2度のリードに成功した。
ただ、結局は試合終了間際の柏の三丸拡の目の覚めるような一発で柏が追い付き、川崎も逃げ切りに失敗。川崎としては試合をクローズする術、柏としては打たれ弱さという点に大きな課題を残したという内容であった。
印象的なだったのは試合後、リカルド・ロドリゲス監督が改めて目指す方向性を語った言葉だ。
「1点差で勝っている状態から追加点を取るのは相手チームとしては2得点差になるわけですから、より苦しい状況になるのは当たり前の展開です。それゆえに我々は勝っている状態でも追加点を(目指す)。2点差があれば3点差を目指して攻撃を続けるというフィロソフィーを我々は、レイソルは持っています。そしてこのような攻撃的なフィロソフィーを持っているのは、このほうがサポーターの皆さんも喜んでくれるでしょうし、そのようなプレーを見たほうが満喫してくれると思うからです。
同時に選手の成長にもこのようなプレースタイルのほうがつながると信じているからです。このクラブはこのようなフィロソフィーを目指しています。もちろん他のタイプのフィロソフィーを持っている監督もいるかもしれませんが、私も監督としてこのようなフィロソフィーとともに戦い続けたいと思います」
この考え方は、奇しくも昨季まで長年、川崎を率いた鬼木達監督が何度も口にしていたフレーズと多くの部分で重なる。
監督が変わればチームも変わる。指揮官は自らのスタイルを選手たちに落とし込み勝利を目指すのだから当然である。
だが、この試合で何より気になったのは両クラブの今後の方向性である。川崎はかつて風間八宏監督がベースを築き、鬼木監督が昇華させた、技術力と相手を見る目を活かしてボールを大事にし、主体的に見ている人たちを喜ばせるような攻め勝つサッカーをここ数年はフィロソフィーとしてきた。
一方で柏はリカルド・ロドリゲス監督の就任前まではどちらかというと守備に軸足を置いたサッカーも展開していた印象がある。
そのなかで、柏は打たれ弱い守備に目をつぶりつつ、今の美しいサッカーを貫けるのか。対して、川崎はカウンターを主体としたサッカーを今後の哲学として築いていくのか。
前述したように何より大事なのはクラブとしての方向性である。川崎としてはタイトルを獲らなくてはいけない立場になっただけに、理想ばかりを掲げているわけにもいかないのだろう。その点でそれぞれが今のサッカーを今後のベースに考えていれば問題はない。だが、シーソーのように、戻ったり変化したりを繰り返していたら、積み重ねは生まれない。
柏のある選手はこうこぼしていたのも印象に残る。
「今の川崎は後方でビルドアップをしない。ロングボールが主体だから」
1年前の川崎では決して言われなかったフレーズである。もっとも今の川崎の前線のタレントを活かすには、遅攻よりも速攻のほうが理にかなっているのだろう。要は繰り返しになるが、クラブ一体となって、どんなチームを作り上げていきたいかだ。
かつて鬼木監督は魅力的なチームを作るには「志(こころざし)」が必要だと話していた。
この一戦の前に、南葛SCでのリーグ最終戦を戦った風間八宏監督は改めて「面白いことをやり続けたい」と話していた。
個人的にはインテンシティが合言葉になった昨今において、川崎と柏の両チームには、技術力や意外性といったサッカーの魅力を示して欲しいと願っている。もっとも川崎はより相手にボールを持たせつつ、勝率を高めるサッカーに舵を切るのか、柏は理想を貫き続けられるのか、今後のJリーグの在り方にも影響を与えそうな両チームの指針は気になる。計8ゴールも生まれ満足できた観衆も多いだろう一戦はそこに大きな興味を感じられるような内容でもあった。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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「1点差で勝っている状態から追加点を取るのは相手チームとしては2得点差になるわけですから、より苦しい状況になるのは当たり前の展開です。それゆえに我々は勝っている状態でも追加点を(目指す)。2点差があれば3点差を目指して攻撃を続けるというフィロソフィーを我々は、レイソルは持っています。そしてこのような攻撃的なフィロソフィーを持っているのは、このほうがサポーターの皆さんも喜んでくれるでしょうし、そのようなプレーを見たほうが満喫してくれると思うからです。
同時に選手の成長にもこのようなプレースタイルのほうがつながると信じているからです。このクラブはこのようなフィロソフィーを目指しています。もちろん他のタイプのフィロソフィーを持っている監督もいるかもしれませんが、私も監督としてこのようなフィロソフィーとともに戦い続けたいと思います」
この考え方は、奇しくも昨季まで長年、川崎を率いた鬼木達監督が何度も口にしていたフレーズと多くの部分で重なる。
監督が変わればチームも変わる。指揮官は自らのスタイルを選手たちに落とし込み勝利を目指すのだから当然である。
だが、この試合で何より気になったのは両クラブの今後の方向性である。川崎はかつて風間八宏監督がベースを築き、鬼木監督が昇華させた、技術力と相手を見る目を活かしてボールを大事にし、主体的に見ている人たちを喜ばせるような攻め勝つサッカーをここ数年はフィロソフィーとしてきた。
一方で柏はリカルド・ロドリゲス監督の就任前まではどちらかというと守備に軸足を置いたサッカーも展開していた印象がある。
そのなかで、柏は打たれ弱い守備に目をつぶりつつ、今の美しいサッカーを貫けるのか。対して、川崎はカウンターを主体としたサッカーを今後の哲学として築いていくのか。
前述したように何より大事なのはクラブとしての方向性である。川崎としてはタイトルを獲らなくてはいけない立場になっただけに、理想ばかりを掲げているわけにもいかないのだろう。その点でそれぞれが今のサッカーを今後のベースに考えていれば問題はない。だが、シーソーのように、戻ったり変化したりを繰り返していたら、積み重ねは生まれない。
柏のある選手はこうこぼしていたのも印象に残る。
「今の川崎は後方でビルドアップをしない。ロングボールが主体だから」
1年前の川崎では決して言われなかったフレーズである。もっとも今の川崎の前線のタレントを活かすには、遅攻よりも速攻のほうが理にかなっているのだろう。要は繰り返しになるが、クラブ一体となって、どんなチームを作り上げていきたいかだ。
かつて鬼木監督は魅力的なチームを作るには「志(こころざし)」が必要だと話していた。
この一戦の前に、南葛SCでのリーグ最終戦を戦った風間八宏監督は改めて「面白いことをやり続けたい」と話していた。
個人的にはインテンシティが合言葉になった昨今において、川崎と柏の両チームには、技術力や意外性といったサッカーの魅力を示して欲しいと願っている。もっとも川崎はより相手にボールを持たせつつ、勝率を高めるサッカーに舵を切るのか、柏は理想を貫き続けられるのか、今後のJリーグの在り方にも影響を与えそうな両チームの指針は気になる。計8ゴールも生まれ満足できた観衆も多いだろう一戦はそこに大きな興味を感じられるような内容でもあった。
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