８月某日の練習後、取材対応する横浜FCの伊藤翔に、話の流れから報道陣が伊藤の年齢を口にする。

　37歳の熟練アタッカーは「言うんじゃない。ちょっと嫌なんだ」とニヤリ。本音を吐露する。

「歳をとってきたら、“年齢はただの数字だ”みたいなことをみんな言うけど、数字は数字で意味はあるから。それだけやってきたって。そういう意味では大事なんだけど、そりゃあ、25ぐらいがいいじゃん（笑）」

　軽妙なトークで場を和ませる伊藤は、心地良い汗をかいていた。この日は強い日差しが照りつける真夏日。「マジで暑い。今週はサッカーをやってはいけないかもしれない」とうそぶく伊藤は、長袖のウェアにスパッツ、手袋まではめてトレーニングに励んでいた。

　日焼け対策？ もちろんそうだが、なぜ“焼けたくない”のか。

「歳を重ねると、日にあたった回復もしなければいけない。若い時は日焼けして、暑いわ、寝づらいわとか言っても、次の日、普通に練習できた。でも、だんだんと日焼けのダメージ、熱のダメージをくらうようになってきた。だから、あんまり日焼けはしたくない」
 

　とはいっても、そんな“重装備”で暑くはないのか。分かりきった馬鹿みたいな質問に、伊藤は丁寧に「暑い」と答えてくれて、「でも、“うまみ”があるから」と続ける。「これはやっぱり、夏は日焼けしないほうが楽だぞって。長袖、長ズボン、最初は暑くて嫌だったけど、そっちのほうが自分的には良いなと思った」。

　ベストなコンディションで日々の練習に、試合に臨むために。妥協せずに準備する伊藤は、１－０で勝ち切った前節のヴィッセル神戸戦で値千金の決勝点を決めている。待望の今季初ゴールだ。

　連発、そして連勝を期して、次節は23日にガンバ大阪のホームに乗り込む。伊藤は「いつもそうだけど、次が大事なんで。（神戸戦は）いったん忘れて、良い流れだけを継続して、次に向かって練習するだけ」と気を引き締めた。

取材・文●広島由寛（サッカーダイジェストWeb編集部）

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