それでも、４月中旬に復帰し、サントスでは少しずつ出場時間を増やしてきた。

　ネイマールは来年のワールドカップ出場に意欲を燃やしており、今年５月にブラジル代表の監督に就任したカルロ・アンチェロッティも「ネイマールは特別な選手。復調を期待している」と語っている。

　セレソンはすでに26年ワールドカップの本大会出場を決めており、９月の２試合は消化試合だ。今後、さらにコンディションを上げてブラジル全国リーグで結果を残し続ければ、１年11か月ぶりのセレソン復帰が現実味を帯びてくる。最大の敵は、近年頻発している故障だ。

　６月１日のボタフォゴ戦で、ゴール前で相手GKと競り合った際に浮き球を手で押し込んだのがバレて、この試合２枚目のイエローカードで退場を言い渡された。また、７月24日のインテルナシオナウ戦では、試合後、スタンドのファンからの野次に激昂して口論を繰り広げた。33歳になったものの、人間的な成熟の点では依然として発展途上だ。

　守備面での貢献はあまり期待できないから、来年のワールドカップのメンバーに選出されてセレソンの勝利に貢献するためには、攻撃面で圧倒的なプレーを見せる必要がある。はたして、今のネイマールにそれができるのか。

　セレソンに復帰させればベンチに置いておける存在ではないだけに、アンチェロッティ監督もネイマールの状態を注意深く見定めているに違いない。

文●沢田啓明
 
【著者プロフィール】
1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。

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