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良くも悪くもこれぞ“鹿島らしさ”。首位・柏にパス数で378本も上回られても大一番で勝ち切った意味

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2025年07月21日

後半アディショナルタイムに劇的な決勝弾

柏との接戦を制した鹿島。連敗を「3」で止めた。写真:鈴木颯太朗

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[J1第24節]鹿島 3-2 柏/7月20日/メルカリスタジアム

 強い気持ち、覚悟には引力がある。それを感じたゲームであった。

 前節、アウェーで川崎に敗れ3連敗を喫した鹿島は長く守ってきた首位の座から陥落。代わってリーグトップに立った柏をホームに迎えたこの一戦は、優勝争い生き残りへスタジアムに3万3400人の観衆が詰めかけたまさに大一番であった。

 その気合いを見せるように、鹿島は開始5分には高い位置からのプレスでボールを奪うと、スタジアムを沸かせるロングシュートをレオ・セアラが叩き込み、先制に成功してみせる。

 しかしその後は、3-4-2-1の柏の巧みな位置取り、ポゼッションに後手を踏み、チャンスを作られる。

 それでも39分にはセットプレーのワンチャンスからCB植田直通が追加点を奪ってしまうのが、鹿島というチームなのだろう。直後には相手の突破からルーズボールをクリアし切れずに失点。そこは“らしく”なかったが、後半も身体を張って守りながらカウンターを狙った。

 76分には縦パスを巧みにトラップされ瀬川祐輔に同点弾を決められ、直後にはハンドでPKを献上。絶体絶命の状況を迎えたが、ここでも多くのサポーターの後押しによる不思議な力が働いたかのように小屋松知哉のシュートは枠外に外れていった。

 そして後半アディショナルタイムには、試合を通じて冷静なプレーを見せていた柏のCB古賀太陽がゴール前でまさかのパスミス。劇的な勝ち越し弾で首位の柏を破る大きな勝利を挙げてみせたのだ。今季から就任した鬼木達監督は複雑な想いも含めつつ語った。

「多くのサポーターが集まってくださった。そのなかで、非常にやりがいのあるゲームができたと思っています。ただ、内容はリードしているなかで追いつかれ、逆転されてもおかしくないようなゲーム。改善しなければいけない部分は多くあります。そういったなかでも、今までだったら追いつかれて逆転されていた。今日もそういうシチュエーションになってもおかしくなかった。

 それでも最後は勝利に持っていった。そこは彼らの気持ちがあったからこそだと思っています。また多くのサポーターの皆さんに助けられました。今日はそういうゲームでした。これからオフに入りますが、もう一度優勝争いができるチームになっていきたいです」

 そして続けた。

「非常に難しいところです。(鹿島らしさと呼ばれる部分は)それもあると思います。ただ、その言葉に納得しすぎることなく、改善すべきところは改善していきたい。

 ただ、あれだけ相手にチャンスがありながらも失点しないというのは、選手の頑張りがあったと思いますし、スタジアムの雰囲気もあったと感じます。そういう意味でも、鹿島らしさを出すことができたと思う。攻撃の部分でも、もうひとつ鹿島らしさを出せるようにやっていきたいです」
 
 闘う姿勢を全面に押し出し、相手のミスを見逃さない。まさに“鹿島らしい”勝利であったと言えるだろう。今節の結果で過去に鹿島しか達成していない3連覇を目指す神戸が首位の座に立ったが、鹿島は勝点2差の2位に浮上。覇権奪回へしぶとく食らいついている。

 一方で柏戦では指揮官の言葉通り課題も少なくなかった。日本代表としてE-1選手権に出場した守護神の早川友基も語る。

「もちろん理想としては、代表の活動に行ってたからこそ、なおさら感じるような話ではないですが、もっとゴール前の球際の部分は強くいかせないといけない。結構フリーで持たれているシーンがあるので、そこは自分が合流して時間が経てばもっと発信していきたいです」

 さらにパス数は柏の664本(成功率84パーセント)に対し、鹿島は286本(成功率72.4パーセント)と、単純比較はできないが、378本の差を付けられた。

 さらにシュート数は柏の17本(枠内4本)に対し、鹿島は6本(枠内3本)。鹿島は枠内の3本をすべて決め、逆に柏はチャンスをことごとく外すなど決定力の差は際立ったが、鬼木監督を今季招聘し、目指すのはより技術力を活かした、観ている人たちをワクワクさせるようなサッカーでもあったはずだ。

 現に指揮官はチーム始動時に“鹿島らしさ”の復活とともに、“魅力して勝つ”との目標を立てていた。タイトルを獲れなくては、勝てなくてはなんの意味もないが、指揮官が目指すサッカーにはまだ距離があると言えるのだろう。

 好みにもよるが、この日、観ていて“面白さ”を表現していたのは個人的には柏のほうであったと感じている。しかし、勝ったのは鹿島だ。かつて何度も見てきたような最後に鹿島が勝っているという強さを取り戻しつつあることは大きなメリットである。もっとも変革も志す“鬼木アントラーズ”が今後、どんな指針を示すのかは大いに気になる。
 
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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