大学サッカーの総理大臣杯の関東代表校を決めるアミノバイタルカップ。大会期間中に、筑波大の３年生エースストライカー内野航太郎のデンマーク１部ブレンビーIF加入のニュースが駆け巡った。

　発表されたのは６月23日。前日にラウンド16で國學院大に勝利し、総理大臣杯の出場権を獲得したばかりだった。翌24日の準々決勝・東洋大戦、ターンオーバーを敷いたため内野はベンチスタートで、同じ３年生のFW小林俊瑛がスタメンでピッチに立った。

「内野が抜けることでの自分にかかるプレッシャーは、一気にのしかかってくると思う。でも、それを力に変えないといけないと思っています」

　小林は内野より４センチ高い、190センチの圧倒的なサイズを持ち、大津高３年時にはプレミアリーグWESTで得点ランキング２位の14ゴールを叩き出したこともある。

　ただ、プレミアEASTで21ゴールという圧巻の数字を残し、得点王に輝いた内野が横浜F・マリノスユースから同じ筑波大に入ってくることを聞いた瞬間から、「強烈なライバルになるだろうし、比較も絶対にされると思う」と覚悟は決めてきた。

　１年時は関東１部リーグで９ゴールを挙げて大ブレイクした内野に対し、小林のリーグ出場は９試合でスタメンは１試合のみ。２年目も11ゴールの内野に対し、コンスタントに出番は掴んだ小林だが、１ゴールで終わった。３年生になった今年も、小林は後半の切り札になることが多く、最後まで内野の壁が彼の前に立ちはだかった。
 

　だが、この期間で小林が成長していないわけではない。フィジカル強化とターンやクロスへの飛び込み、シュートの精度などを徹底して磨き、大学サッカー界でも強烈なハイタワーとして存在感を発揮するようになり、今季はリーグ戦で３ゴール、天皇杯２回戦のV・ファーレン長崎戦では強烈なワントラップシュートを突き刺している。

「僕は足もとで受けて仕事をするタイプで、内野は『ザ・ストライカー』。タイプが違うとは思っていますが、やっぱり強烈に意識するライバルであり、刺激を受ける存在であり、心から尊敬する選手です。練習でも試合でもそうですが、内野がプレーを成功させたり、シュートを決めたりすると、味方も相手チームも、観客も『やっぱり内野か』という雰囲気になるので、『いや、俺もいるぞ』とハートに火がつくことが多いです」

　誰よりも間近でプレーし、悔しい思いを何度も味わってきたからこそ、内野の本当の凄さを理解していた。そして、内野が与えてくれる刺激が自分自身を成長させてくれたことも。だからこそ、彼がチームを離れることが決まって、様々な思いが心の中にこみ上げてきた。

「早かったなという印象はあるし、同期として寂しい気持ちはあるのですが、１人のサッカー選手として、21歳、22歳の選手が海外に行くのは当たり前のことなので、その決断は尊重したいです。絶対にデンマークでも結果を残せる選手だと思うし、一番身近で見てきた仲間として応援しています。それに内野には『筑波は俺に任せろ』と言いたいし、そうなるように頑張るだけです」

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