現地時間５月30日、ブラジルのサンパウロでなでしこジャパンがブラジル女子代表との国際親善試合で１−３と完敗。激しく、狡賢く、闘争心を前面に押し出してきたブラジルに対し、クリーンなファイトを心がけたなでしこジャパンが木っ端微塵に粉砕された印象だ。

　ニルス・ニールセン監督の下で前線からのハイプレスが肝となっていたなでしこジャパンの戦い方を、ブラジルはかなり研究していた感があった。マンツーマン気味のスタンスでプレッシャーをかけ、高いラインを保ってできるだけ敵陣でプレーする。自陣に引いて相手のプレスを受けるような形にあまり持ち込ませなかったのが、ブラジルの勝因のひとつだろう。

　この日の日本は４−３−３システムで戦った。GKは山下杏也加、４バックは右から古賀塔子、熊谷紗希、南萌華、北川ひかる、２ボランチは宮澤ひなたと長野風花、トップ下が谷川萌々子で、３トップは右から浜野まいか、田中美南、藤野あおばと、コンディション不良で招集辞退の長谷川唯の代役は宮澤という形である。

　そんな日本は前半、全くといっていいほどボランチの位置から組み立てられなかった。マンマーク気味の守備に長野も宮澤もほぼ消され、トップ下の谷川はボールを受けてもすぐさま潰される。おそらくブラジルは理解していたのだろう。なでしこジャパンの中盤さえ機能停止させればチーム力がガクッと落ちることを。
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　ブラジルに圧倒されたのは、“絶対軸”長谷川が不在云々の問題ではないと考える。確かに彼女がいれば多少なりともボールが収まるシーンがあったはずだが、それだけで日本のパフォーマンスが劇的に向上するとは思えない。

　最大の問題はやはり最終ライン。中盤の負担を軽減できるような展開力に優れたDFが少なすぎる。物足りないのはやはり熊谷と南の両CBだ。繋ぎの質が低く、ここからゲームを動かせないのは厳しい言い方になるが、致命傷に映る。

　指揮官、選手ともに「世界一を目指す」と明言しているからこそ、守備陣のクオリティアップをまずは実現させてほしい。中盤が抑え込まれないためにも、相手のマークを分散する意味でも最終ラインのビルドアップの質を高めないと“世界制覇”は見えてこないのではないか。

文●白鳥和洋（サッカーダイジェストTV編集長）

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