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「ベガルタは死んでいない」首位の千葉戦で悔しきドローも仙台が悲願のJ1復帰へ示した心を打つ“熱”

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2025年05月18日

完敗した大宮戦の悔しさをぶつける

熱く仙台を率いる森山監督。クラブ団結してJ1を目指す。(C)SOCCER DIGEST

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[J2第16節]千葉 0-0 仙台/5月17日/フクダ電子アリーナ

 前節、2位の大宮に敵地で0-3の完敗を喫した3位の仙台は、アウェー連戦で首位の千葉と対戦。0-0のスコアレスドローで4位へ後退したが、得られたものもあった。

「『ベガルタは死んでいないぞ』と示すには十分な試合だったかなと」

 ゲームを終え、力強く語ったのが熱血漢で知られる“ゴリさん”こと森山佳郎監督だ。

 昇格争いのライバルである大宮との一戦は指揮官曰く「ふがいない試合で我々が大事にしているベースの部分で相手に完全に上回られた」内容で、今節の首位の千葉戦でも連敗を喫すれば、悲願のJ1復帰へ厳しい状況に置かれる可能性があった。それだけに森山監督は強調したという。

「(前節の)悔しさをぶつけることがこの試合の一番のテーマ」だと。

 千葉戦も最後まで1点は遠かった。それでも「試合の入りから最後のホイッスルが鳴るまで、選手たちは本当に100パーセントで戦ってくれた。選手には『この戦いを続けていければ自ずと勝点も積み上がっていくんじゃないか』という話はしました。当然、今はまだまだ勝点の差は広がったままですけど、ここから反撃体勢というか、最後にネットを揺らすクオリティの向上は一朝一夕でできるわけではないですが、積み上げていきたい」と話す。

 千葉戦で見せたのは指揮官も何度も繰り返した“ハイリスク・ハイリターン”を体現する戦い方だ。相手の両サイドハーフには田中和樹、椿直起というスピードのあるキーマンがいたが、果敢にラインを押し上げ、後方でボールを持てばCBから鋭い縦パスを供給。

 ボランチを組んだ武田英寿、鎌田大夢は技術力に秀でた好タレントで、上手く前を向いて前線の人材を活かす。敗れれば痛すぎる一戦だ。それでも“怖がって下がってどうするんだ!!”“俺らは主体的に攻めるんだ!!”そんな指揮官の檄が聞こえてくるようなスタイルに、好感を抱いたのは私だけではないだろう。感じるものがあった人は多いはずだ。

 2ボランチのふたりは攻撃面に特長がある分、守備面に難が見えそうだが、そこもマネジメントに長けた指揮官だ。選手との信頼関係を築けているからこそ、発破をかけたという。

「脅しではないですが、首位攻防の2戦で、守備のところで厳しいよねとなったらもう代えるくらいの話をしました。かなり頑張ってやってくれました」

 攻守に存在感を示した裏にはそんなやり取りがあった。

【動画】千葉×仙台のハイライト


 

完敗した大宮戦でも声援を送った仙台サポーター。チームにとっては心強い。(C)SOCCER DIGEST

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 確かにシュート数、枠内シュート数で千葉を上回ったが、決定力不足、前線のパワー不足は大きな課題だろう。技術力や個性を活かしゴール前までボールを運ぶ術は魅力的だが、その後のひと押しは昇格争いへ向け、チームとして改善する必要がある。現に大宮戦、千葉戦はノーゴールに終わっている。

 もっともチーム力でそれをカバーしていくのが今の仙台のやり方に映り、そこにはサポーターの後押しも大きな影響が加わってくるのだろう。この日もアウェーながら選手たちの背中を押す大声援は実に力強かった。森山監督も力説する。

「私もそんなに気にしてないのですけど、(大宮戦の後)いろんな人が『ここから崩れていくぞ』みたいな声はあって、チームの中でも『ここで崩れたらそのまま崩れるぞ』というのがありました。でも私は絶対そういうのは嫌いなので。

 負けたにせよ、今日も試合前に『勝ち負けは監督の責任だけど、すべて出し切れないのは選手みんなの責任だからな』というところでは、勝とうが負けようが、先週の試合もサポーターが本当に、負けた不甲斐ない試合だったにも関わらず、ものすごい大音量で応援を送ってくれて、『あれに応えなかったらサッカー選手じゃないな』と、選手にもかなりエールは響いていたと思いますし、世界に発信できるぐらいの素晴らしい姿だったかなと。

 我々は、海外の真似じゃないですけど、サッカーというのはそういうもんだ、負けたら『何やっているんだお前ら』みたいな、そういう風潮がありますけど、私は一緒に戦っているのだし、なんなら親戚のおじちゃん、おばちゃんだったらそうだろうし、負けて落ち込んでいる仲間たちに『何やってんだてめえら』と言うのは私は違うと思います。

 だからこそ違う文化を仙台から発信していけたらなと、我々のサポーターは本当に『俺らも苦しい時に横にいるぞ』みたいな応援をしてくれるので、それは本当に素晴らしいなと思いますし、そういうのが仙台発で『世界? 知らねぇよ。日本は違うぞ』と、日本のサポーターはマナーが良く、乱暴したり物を壊したりするような文化はないですし、そこで負けたら選手たちに『てめえら』というようなのはない。

 もちろん、不甲斐ない試合だったら『もっとがんばらなきゃだめだ』と、プロだから勝たないといけないのは当然です。ただそこに本当に愛というか、“共闘”とずっとサポーターの方も言ってくださっていますけど、共に闘うというのはそういうことじゃないかなというのを今回改めて実感させてもらいました。あの不甲斐ない試合で、あの応援を受けて選手たちが今日は本当に、ものすごく戦ってくれたというところでは、かなりサポーターのみなさんと一緒に戦って、頑張って、勝てはしなかったけど、心を打つ試合はできたんじゃないかな、と思います」

 順位は得失点差で絶好調の水戸に抜かれ、4位に落ちた。それでも、仙台は死んでいない。そう知らしめるゲームであった。昇格へ勝たなくていけないのは分かる。ただ、こうした団結力やクラブの熱が正念場で必ず活きるに違いない。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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