スイスリーグのグラスホッパーでプレーする日本代表DF瀬古歩夢。30節終了時で12チーム中11位と今季も残留争いに苦しんでいるチームにおいて、イエローカードの累積で出場停止となった28節シオン戦以外29試合全てに出場。７節セルベッテ戦以外全試合でスタメン出場を果たし、中心選手として重要な役割を担っている。
　
　本職のCBのほか、チーム事情でアンカーを務めることもある。30節の２位バーゼルとのアウェー戦では守備陣にけが人続出というスクランブル態勢で、初めて左サイドバックとして出場した。

　グラスホッパーは前半にセットプレーから２失点。後半にPKで１点を返した後は、優勢に試合をすすめていたが、２点目が遠く、１－２で敗れた。

「センターバックがもっと俺に早い段階でパスをつけてくれたら、スペースがあった。ずっと言ってたんですけど、それでもなかなか出てこなくて難しかったです」

　試合後にそう振り返っていた瀬古だが、25分すぎからはリズムをつかみだし、鋭い縦パスで前線のボールをつけたり、ハーフスペースに入り込んでパスを引き出すなど、適応力を発揮。この辺りにアンカーでプレーしている経験も生かされている。

　58分にはバーゼルのGKが前に出ていたのを見て、ハーフウェーライン付近から虚を突いたロングシュートを放つ場面も。枠はわずかに外れたが、インパクトのあるプレーでホームのファンをどよめかせた。

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　負けはしたものの、優勝争いしているバーゼルに悪くはない試合をした点はプラスに捉えられる。

「２失点ともセットプレーなので、そこはやっぱりもう一度見直す必要がある。ただバーゼル相手にいい戦いができたのは、自分たちにとってポジティブ。残りの試合で、チームが残留できるようにベストを尽くしたいです」（瀬古）

　チーム事情は苦しいなか、自身の今季ここまでのパフォーマンスについては、「正直、悪くはないかなと思ってます。今シーズンの自分に関しては３年半たったので余裕も出てきた」と手ごたえを口にしている。

　グラスホッパーの公式ホームページでは「安定感抜群の守備でチームを支えている」と３月のMVP候補の一人に名前を挙げられていた。

「もちろんチームの結果ついてきてないってことは、非常に残念ですけど。シーズン通して、試合に出続けて、最後までいいパフォーマンスを維持したいなと思ってます」（瀬古）

　12チームで１部が構成されているスイスでは各クラブとそれぞれ３回ずつ対戦したあと、１－６位と７－12位に分かれ、それぞれ最後の５試合を戦う。30試合を終えた段階で11位のグラスホッパーは下位グループでの戦いを乗り切らなければならない。自身を成長させるため、クラブを１部に残留させるために、瀬古は全力で戦い抜く。

取材・文●中野吉之伴

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