【連載】月刊マスコット批評vol.12「レイくん」――なかなか活かされないポテンシャル

カテゴリ:Jリーグ

宇都宮徹壱

2016年06月10日

「ネグレクト状態」となっているマスコットは決して少なくなく…。

くまモンとの貴重な2ショット。先日、日立台で開催された熊本のホームゲームではレイくんも会場を盛り上げた。写真:宇都宮徹壱

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レイくん(柏レイソル)
 
■レイくんの評価(5段階)
 
・愛され度:4.5
・ご当地度:3.5
・パーソナリティ:3.5
・オリジナリティ:4.5
・ストーリー性:3.0
・発展性:3.5

 
 Jクラブのマスコットは、無条件で愛されているわけではない。もちろんサポーターは全面的に「ウチの子」に愛情を注いでいる。が、クラブがマスコットを愛しているかというと、必ずしもそうではないのが実情だ。
 
 せっかく素晴らしいマスコットを有しているのに、活躍の場をなかなか与えない、キャラクター設定がいい加減、きちんと躾けられていないので芸風が貧弱、なかなか洗ってもらえない、などなど「ネグレクト状態」となっているマスコットは決して少なくないのである(「ウチの子もそうだ」とドキっとした方もきっといるはずだ)。なぜマスコットの「ネグレクト状態」が起こってしまうのか。よくよく観察してみると、そこにはある一定の共通項があることに気づく。
 
 まず、オリジナル10をはじめとするJリーグ黎明期に加盟したクラブであること。そして「試合オリエンテッド(志向)」なクラブであること。前者については、この時期のマスコットはJリーグから「あてがわれた」ものであり、クラブ側が望んだものではなかった。それゆえマスコットの活かし方が分からないまま、年月を重ねてしまう傾向が見受けられる。
 
 では、後者の「試合オリエンテッド」とはなにか。極論するなら「俺たち試合の方が大事だから、マスコットなんていらねえ!」と言わんばかりのカラーを持ったクラブである。浦和や鹿島は、その筆頭。特に浦和の場合、マスコット総選挙でレディアを最下位にする「運動」を起こして話題にもなった。
 
 柏もまた、95年からJリーグに参戦しているし、ゴール裏の応援は「お笑い」の要素はふんだんにあるものの、どちらかというと「試合オリエンテッド」なクラブであった。それゆえであろうか、正直なところ柏は、マスコットの潜在能力を引き出しているとは言い難い。だから見ていて歯がゆいことこの上ないのである。
 
 ツイッターアカウントを持っているのに、発信する内容はいかにも「広報が書いています」という感じ。「太陽の王子」という設定を与えられているのに、顔が汚れたままビラ配りをしていたことがネットで話題に。誰からも愛されるキャラクターなのに、いまだに彼女なし。昨年のマスコット総選挙で、レイくんがJ1最下位の29位に沈んだのは、決して当人だけのせいではないので、なおさら口惜しく感じる(今年は16位に浮上)。
 
 そんなレイくんに久々に再会したのが、先月22日に日立台で開催された熊本のホームゲーム(対水戸戦)であった。周知のとおり熊本は、地震の影響でうまスタが使用できないため、地震後最初のホームゲームは柏で行なわれた。その際、ロアッソくんやくまモンやホーリーくんと一緒にレイくんも登場したのにはちょっと驚いた。
 
 前日、自分のホームゲームがあったにもかかわらず、休み返上で熊本のホームゲームを盛り上げようとするレイくん。その優しさとプロ意識に、私は深い感銘を覚えた。柏には、本当に素晴らしいマスコットがいる。だからこそ、レイくんのポテンシャルを十全に活かした広報やマーチャンダイズを、クラブ側には切に求めたいところだ。
 
宇都宮徹壱/うつのみや・てついち 1966年、東京都生まれ。97年より国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。近著に『フットボール百景』(東邦出版)。自称、マスコット評論家。公式メールマガジン『徹マガ』。http://tetsumaga.com/
 
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