ブラジルのゴールラッシュは14分に幕を開ける。フィリッペ・コウチーニョが左サイドで良いかたちでボールを受け、中央に切れ込んで強烈なミドルを叩き込み、早くも均衡を破った。
29分の2点目もコウチーニョ。右SBダニエウ・アウベスのクロスをニアでジョナスが受け、粘って左に流すと、ゴール前で完全にフリーの状態で待ち受けていたコウチーニョは、難なく無人のゴールに流し込んだ。
35分は中盤のレナト・アウグストだ。ハイチGKジョニー・プラシドのフィードをカットしたD・アウベスの素早いクロスを、頭で合わせた一撃だった。
後半最初のゴールは59分に生まれた。ジョナスに代わって出場した19歳のガブリエウ・バルボーザが、中央から持ち込んだジョナスの丁寧なパスを受け、ゴール右隅に叩き込む。
続く67分のゴールも、交代出場のルーカス・リマ。D・アウベスからのクロスを、下がりながらの体勢で、しっかりコントロールされたヘディングシュートを放った。
この3分後、ハイチのドゥケン・ナゾンに左サイドを突破され、マス・イライルのシュートのこぼれ球をジャメ・マルスランに詰められて1点を与えてしまったブラジルだが、これで流れが変わることはなかった。
86分には相手DFのパスを中央でカットしたR・アウグストがそのまま突き進み、右に流れたガブリエウにパスを出すと見せかけてシュートを放ち自身2点目。さらにアディショナルタイムには、コウチーニョが左からのカットインで鮮やかなゴールを決め、ハットトリックでゴールショーを締めた。
エクアドルとの1戦目を消化不良のスコアレスドローで終えていたブラジルにとっては、意味ある大勝であり、準々決勝進出に大きく前進したと言える。一方、ハイチは2敗となり、グループステージ敗退が決まった。
目に見える結果を残したブラジルだが、不満な点も。力の差は明白のハイチに対し、何度も好機を迎えるも、ラストパスは意外性や創造性を欠け、引いて守るだけの相手に容易にはね返された。連動した動きで相手を崩すプレーが見られたのも、ほんの数えるほどだった。
また、これまでのブラジルであれば、ベストメンバーでなくとも当たり前だったイメージの共有もなされず、ノープレッシャーの状態でダイレクトパスをミスしたり、容易であるはずの横パスがずれたり(これで何度も好機を逸した)と、自らプレーを遅らせる場面が多々あった。
終盤戦はハイチが疲れ、スペースも与えてくれたことで、ラインの裏側にパスが次々と通せたものの、そこからのプレーの選択が的確であれば、もっとゴールは決まっていただろう。
ハイチに当たりの激しさが見られず、無理をする必要がないブラジルもこれに付き合ったことで、8ゴールが生まれた一戦は、やや迫力の欠けるものとなった。
この対戦で思い出されるのは、2004年8月に行なわれたハイチの首都ポルト・プリンシペでの対決。内戦状態のハイチで一般市民の武装解除を目的に、「武器を差し出せばブラジルの試合が見られる」というユニークなコンセプトで行なわれた一戦だ。
試合は、今回同様にブラジルが6点差で勝利(6-0)。しかし、その内容は大きく異なり、当時のチームは「まるで手品師だ」と絶賛されたロナウジーニョのドリブルでのゴールなど、サッカー王国らしい鮮やかなプレーの連続で詰めかけたハイチ人を大いに魅せた。
現在、自国民の関心度も低下しているというブラジル代表。再建の道のりは、かなり険しそうだ。
