母国開催のEUROで優勝トロフィーを掲げる。ドイツ代表の悲願は達成されなかった。グループリーグを首位で突破し、決勝トーナメント１回戦ではデンマークに２－０で勝利。16年大会以来となるベスト進出を果たしたものの、事実上の決勝戦と注目を集めたスペインとの決戦で、延長戦の末に１－２で敗れた。

　最後まで懸命にゴールを狙ったが、あと一歩届かなかった。失意のドイツ代表とファンは涙したが、今大会では間違いなく、大切なものを勝ち取ることができた。

　今大会限りでプロ選手として現役引退をするトニ・クロースがスペイン戦後に語っていた。結果は残念だったし悲しいことだ、と。でもそれ以上に大切なのはファンのハートをまたつかむことができたこと、そのためにいいサッカーをピッチ上にもたらすことができたことだ、と。

「僕らは誇りに思っていい。みんなに、これまでよりも成長した姿を見せることができたんだ。ドイツサッカーに希望と、もっとよくなりたいという要求をもたらす助けにほんの少しでもなれたのならうれしいよ」
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　クロースの代表復帰とともに、ドイツ代表は存在意義と確かなまとまりをこれまで以上に感じさせられるようになった。ヨズア・キミッヒは「素晴らしい選手で、素晴らしい人間だ。ドイツサッカー界でも最高の選手だと思う。僕らみんなにとって模範的な存在だった」と34歳のことを振り返っている。

　ユリアン・ナーゲルスマン監督はそんなクロースを中心に、チームとしての機能美と代表グループとしてのまとまりを考慮したメンバー選考を決断したことで、一丸となってドイツのために全力を尽くすチームが生まれた。試合に出られないメンバーが本気でチームの応援をする。

　ナーゲルスマンも「この数年間、チームの得点でベンチの選手全員が飛び出して大喜びするなんてことはなかった。本当にみんなが一丸となって戦ってくれたんだ」と涙をこらえながら言葉を絞り出していたのが印象的だった。

　そんなドイツ代表を支えようとファンがどんどん戻ってきた。スタジアムだけではなく、各地で行われたパブリックビューイングではどの試合でも数万人以上が集まり、ドイツ代表に応援を送り続けた。スペイン戦でのテレビ視聴数は2613万人。14－49歳における視聴率だと、89.7％という驚異的な数字をたたき出した。
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