• トップ
  • ニュース一覧
  • ネイマールが辟易した“戦術マニア”のエメリ。アストン・ビラで旋風を起こすも「ビッグクラブでは通用しない」説も【コラム】

ネイマールが辟易した“戦術マニア”のエメリ。アストン・ビラで旋風を起こすも「ビッグクラブでは通用しない」説も【コラム】

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2024年07月02日

アルメリア時代は2バックシステムを発案

アストン・ビラにCL出場権獲得をもたらしたエメリ。(C)Getty Images

画像を見る

「ビッグクラブでは、選手の多くが“監督の判断は常に的中すべき”と求める。その点、我々監督は、あらゆる準備のディテールにおいて、決して間違ってはならない。何を、どのように伝えるのか、いつ、誰に言うのか、すべてにおいてだ」

 これは今シーズン、プレミアリーグでアストン・ビラを率いてセンセーションを巻き起こしたスペイン人監督ウナイ・エメリの言葉である。

 エメリはカテゴライズするなら、「戦術家」となるだろう。その点、完璧主義者と言ってもいい。自らのシステム、もしくは論理を用い、その中で選手を躍動させる采配に長ける。たとえばバレンシアを率いていた時代、サイドバックに高い位置でのプレーを求め、左サイドアタッカーだったジョルディ・アルバを左サイドバックにコンバートした。慧眼によって、バルサ、スペイン代表でも一時代を築くプレーヤーにしたのだ。

 エメリは常に策をいくつか持ち、セットプレーのバリエーションも桁違いに多い。時には奇策も使う。アルメリアの監督時代は、2バックというシステムを発案。両サイドにまでセンターバックが開いて、相手のプレッシングを無力化させ、話題になった。

 いわゆる策士とも言える。

 しかしながら、エメリは選手の力量そのものよりも策を重視してしまうところがあって、それが選手に嫌悪されることもあった。策士、策に溺れる、と言ったところか。

 セビージャでヨーロッパリーグ3連覇を成し遂げた後、2016-17シーズンから、パリ・サンジェルマンを率いた時には大いに期待された。ビッグクラブでは、能力の高い選手をふんだんに揃えられたからだ。
【PHOTO】EURO2024を華やかに彩る各国の美女サポーターを特集!
 しかし、ブラジル人スターであるネイマールが来て、トラブルが発生した。エメリの戦術マニアぶりに辟易してしまい、最後はケガもあって蜜月にはならなかった。

 結局、エメリはリーグ・アン制覇を置き土産に、退任した。スター軍団を統制できなかったのだ。

「エメリはビッグクラブでは通用しないのでは?」

 限界説が囁かれるようになった。

 その後、強豪アーセナルを率いたが、やはり期待されたような成果は出せていない。再び、スペインに戻ってビジャレアルをEL優勝に導いた後、アストン・ビラでの成功につなげている。その点で言えば、やはり中堅クラブで最高の手腕を発揮できるが...。

 選手が成長するように、監督も成長する。監督も、敗北から学ぶ。さまざまなチームを率いることで、戦略も広がる。戦術という局地的、部分的なものに優れているだけでなく、戦略的な厚みも出る。

 戦術家エメリのバージョンアップが楽しみだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

【PHOTO】EUROで躍動する名手たちの妻、恋人、パートナーら“WAGs”を一挙紹介!
 
【関連記事】
「25年に彼を取り戻す」マドリーの久保建英“再獲得”は来夏か。地元メディアが報道「ベルナベウに戻れる」
「自分が出る必要あるか?」小野伸二が悪夢の06年W杯豪州戦に本音。投入から13分間で3失点「交代からバランスが悪くなった。責任を感じた」
「僕も6番を獲ったほうがいいと思う」遠藤航、リバプールのアンカー補強報道にまさかの発言。“真意”は?「マカリステルのような選手を...」
「Jリーグでは出られない」なぜ福田師王は10クラブのオファーを断り、高卒で海外挑戦を決断したのか。“意外な理由”に内田篤人は感心「ちゃんと考えてるな」
「世界で3本の指に入る」長谷部誠、かつて“喧嘩”したDFの成長に驚き!「やんちゃで荒削りだった」

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト 王国の誇りを胸に
    4月10日発売
    サッカー王国復活へ
    清水エスパルス
    3年ぶりのJ1で異彩を放つ
    オレンジ戦士たちの真髄
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 特別企画
    5月1日発売
    プレミアリーグ
    スター★100人物語
    絆、ルーツ、感動秘話など
    百人百通りのドラマがここに!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 完全保存版
    1月17日発売
    第103回全国高校サッカー選手権
    決戦速報号
    前橋育英が7年ぶりの戴冠
    全47試合&活躍選手を詳報!
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ