「2004年のJ2時代から誰よりも近くで自分のことを観てくれていた」と中村本人が認める著者が、2010年の南アフリカ・ワールドカップから現在までを克明に描いたノンフィクション。
ピッチ内外での中村の行動や周辺の人々の言葉が、当時彼が置かれていた状況や心の内を鮮明に蘇らせている。読者は中村の生き様を追体験できるだろう。
川崎は強豪と言われて久しいが、いまだタイトルとは無縁。そのチームで主力を張ってきた中村もまた、頂点に立つ夢を断たれてきた。それが今はどうだ。第1ステージ2位で浦和を追走し、初タイトルに向けて猛然と突き進んでいる。
無名の男が川崎一筋で築き上げて来たキャリアの集大成が、もしかしてすぐ近くまできているかもしれない。そんなタイミングで読む一冊として、これ以上のものはないだろう。
『残心Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』
著者:飯尾篤史
発行:株式会社講談社