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難関国立大に受かれば、プロも諦めない。藤枝東FW植野悠斗の飽くなき挑戦「二兎を追おうと思って動き出す者しか、二兎を手にするチャンスはない」

カテゴリ:高校・ユース・その他

安藤隆人

2023年11月09日

“できなかったらどうしよう”という考えは、ない

憧れの全国へ――静学との決勝に向けて闘志を燃やす植野。写真:安藤隆人

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「3度目の正直、今年こそは優勝したいという気持ちが強いです」

 こう語るのは、藤枝東の188センチの長身エースストライカー・植野悠斗だ。

 1年時から試合に出ている植野にとって過去2年間、悲願の選手権出場を目の前で断たれてきた。それだけに、準決勝で浜名高を倒して3年連続の決勝進出を決めた試合後、彼はすでに決勝に向けて、その熱い闘志を燃やしていた。

 その一方で植野といえば、学業優秀で、サッカーに打ち込みつつ、難関国立大学の一般受験に向けて勉強にも励んでいる。

 春にも本サイトでコラムを書いたが、あれからちょうど7か月が経ち、植野の気持ちを聞いてみると、「あの時と目標は一切変わっていませんし、気持ちもぶれていません。高校サッカーをやり切るところまでやったら、すぐに受験モードに切り替えて、大学入学共通テスト(旧・大学入試センター試験)に挑むつもりです」とはっきりと口にした。

 ただ、少しだけ7か月前と心境の変化があったという。それはサッカーに対する情熱だった。

「サッカーをより高いレベルで続けたい気持ちは強くなっています。だからこそ、目標とする大学に進むことができたら、そこでプロを諦めるのではなく、その環境で勉強と共に、これまで通りサッカーにも全力を注いで、そこで自分の進路を広げたいと思っています。サッカーにかける情熱はかなり増しています」

 植野は大柄なフィジカルを武器としたポストプレーや空中戦の強さ、対人の強さはもちろん、精度の高いキックと一瞬のスピードで裏のスペースを突いていくプレーも得意とする。

 春先は初めてCBを経験すると、「自分の武器を活かせるので、やれる手応えを感じた」と語るように、高い適応能力も示した。インターハイ予選後に本職のFWに戻ると、CBでの経験値を活かし、エースストライカーとして、さらに躍動した。
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 プリンスリーグ東海では、インターハイ予選後の第7節・海星戦から8試合で12ゴールと大暴れ。高校最後の選手権予選では、初戦となる2回戦のオイスカ浜松国際戦でゴールを挙げると、準々決勝の富士市立戦では決勝弾をマーク。浜名戦ではゴールこそなかったが、前線で起点を作るだけではなく、献身的な守備も見せた。

「今日の浜名のように、僕に対してマークが厳しくなることは当然のことだと思っていますし、それを打開していかないとエースとは言えない。決勝では打開する姿を見せたいし、何より全国大会に行きたい」

 溢れる全国への想い。決勝の相手である静岡学園と、過去2年の悔しかった思いを打破して、思い焦がれたステージへ進めるか。

 堅い決意を持った植野に「よく『二兎を追う者は一兎をも得ず』と言いますが、別に二兎を追ってもいいですよね?」と聞くと、笑顔を見せてこう答えた。

「二兎を追おうと思って動き出す者しか、二兎を手にするチャンスはないと思っているので、両方掴み取るつもりでやります。『できなかったらどうしよう』という考えは、僕にはありません」

 できない未来を恐れるより、出来るために何をすべきか考えて行動し続ける。植野にとって全国大会出場がゴールではないし、大学合格がゴールでもない。その先にある世界こそが、二兎追うための新たなスタートラインなのだ。

「勉強もサッカーも高いレベルでしか学べないことがある。だからこそ、僕は二兎を追い続けます」

 植野がいま過ごす熱い時間は、これからの大きなエネルギーとなる。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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