2023年10月26日（現地時間）、パリ五輪アジア２次予選を戦うなでしこジャパンがインド女子代表に７-０と勝利。１点しか奪えなかった前半はモヤモヤする展開だったが、後半に怒涛のゴールラッシュを披露した。

　キャプテンの熊谷をアンカーに置く４-３-３システムでスタートさせたなでしこジャパンは前半、５バックを敷くインドを相手に苦戦。立ち上がりからボールの支配率を高め、17分に中嶋のシュートで先制しながらも、攻撃になかなかリズムが生まれなかった。インサイドハーフの長谷川と杉田に良い形で縦パスが入らず、大外からの攻めが増えたせいで敵の守備網を突破できなかった印象があった。

　熊谷がボールを持った時の判断があまり早くなく、それが攻撃を停滞させる一因になったとも言える。人数をかけて、引いて守る相手を崩すのは決して簡単ではないが、それにしてもこの日の前半のなでしこジャパンは仕掛けや崩しの局面で工夫がないように見えた。

　それが後半、なでしこジャパンはまるで生まれ変わったかのように躍動する。何よりの変化は、縦パスの意識とクロスの質だろう。高い位置でパスを受けられるようになった両インサイドハーフに良いタイミングでボールが入るようになり、さらにサイドからゴール前に速くて低目のクロスが蹴り込まれるようになったおかげで、攻撃に厚みが出たように映った。
 

　特筆すべきは６点目と７点目の崩しだ。いわゆるポケット（ニアゾーン）に侵入して、そこからのクロス、至近距離からのシュートで奪ったゴールは、敵からすれば止めるのは困難。いずれも美しく、完璧に近い得点だったと言えるだろう。

　ともにドリブルとパスが得意な中嶋と遠藤の左サイドは、インドからしたら“地獄”だったに違いない。ボールを奪おうと突っ込めばかわされ、ディレイすれば好き放題やられる。

　また、熊谷に代わってアンカーを後半途中から任された長野のゲームメイクも素晴らしかった。無駄にボールをキープせず、テンポ良くパスを出す。簡単なようでそうではないプレーを容易くこなし、チームにリズムをもたらした点で勝利の立役者と言えるだろう。

　２ゴール・２アシストの中嶋の活躍が目立ったが、個人的には長野のゲームメイクがもっとも印象的だった。引いた相手との戦いが続くだろう２次予選は、熊谷よりも長野をスタメンで使ったほうがテンポの良いアタックを仕掛けられるかもしれない。

文●白鳥和洋（サッカーダイジェストTV編集長）

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