【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のユナイテッドを振り返る vol.5~1994-95シーズン ~

カテゴリ:メガクラブ

サッカーダイジェストWeb編集部

2016年02月01日

儚く散ったプレミア3連覇の夢…。屈辱の無冠を味わう。

“カンフーキック事件”での処分により長期離脱を強いられたカントナだが、後に「多くの思い出があるが、とりわけ気に入っているのは、フーリガンを蹴り飛ばした時だ」と現役生活で一番の思い出に、この一件を挙げている。 (C) Getty Images

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 前年にクラブ史上初の二冠を達成し、さらなる高みを目指したユナイテッドにとって1994-95シーズンは悪夢とも言うべき1年となった。
 
 開幕前に“クラブ史上最も偉大な主将”とも言われ、ユナイテッド再建の礎を築いたレジェンドのブライアン・ロブソンがミドルスブラへ移籍。精神的な支柱を失ったチームは安定感を欠くこととなった。
 
 リーグカップでニューカッスルに0-2で競り負けて3回戦で敗退し、期待されたチャンピオンズ・リーグもバルセロナ(0-4)、イェーテボリ(1-3)に連敗を喫するなど、勝負弱さを露呈し、グループステージ敗退の憂き目に遭ってしまう。
 
 シーズンを折り返す前に早くも2つのタイトルを喪失したユナイテッドは危機感を募らせ、残るプレミアリーグ、FAカップを獲得するべく、1月の移籍期間に700万ポンド(約11億9000万円)を費やして、ニューカッスルからアンディ・コールの引き抜きを敢行した。
 
 前シーズンにプレミアで34ゴールを叩き出し、PFA(選手協会)ヤングプレーヤー賞を受賞した大砲の獲得で、ユナイテッドの面々の士気は一気に高まる。しかし、その2週間後の“ある事件”が、その雰囲気を一変させてしまう。
 
 95年1月25日、クリスタル・パレス戦(プレミア25節)。相手DFとの衝突で退場を告げられたエリック・カントナがピッチを去ろうとした際、通路脇のスタンドにいたパレスサポーターのマシュー・シモンズから「お前の母親は売春婦だ!」とヤジを浴びせられたことに激高し、飛び蹴りと数発のパンチで応酬してしまったのだ。
 
 後に“カンフーキック事件”としてサッカー史に刻まれたこの一件は、コール獲得で優勝のシナリオを描いていたユナイテッド関係者を凍りつかせた。
 
 カントナは、この蛮行を重くみたFA(イングランドサッカー協会)から罰金5万ポンド、8か月の出場停止、さらに裁判で禁固14日間(後に120日間の社会奉仕活動に軽減)に処せられることに。ユナイテッドは頼みの綱を欠いたまま、プレミア優勝争いを強いられた。
 
 ちなみにこの時、ユナイテッドとデッドヒートを繰り広げたのはブラックバーンだ。ケニー・ダルグリッシュ指揮の下、イングランド代表FWのアラン・シアラーのゴール量産(34ゴールを挙げてこのシーズンの得点王に)もあり、予想外の躍進を遂げた。
 
 しかし迎えた最終節、首位のブラックバーンはリバプールに敗北を喫してしまう(1-2)。これにより勝点2差の2位につけていたユナイテッドにとっては、逆転優勝へ千載一遇のチャンスが到来した。
 
 しかし、ウェストハムとのアウェーマッチ、ユナイテッドは痛恨のドロー……。勝点でわずか1およばず、プレミア3連覇の夢は儚く散っていった。
 
 失意に暮れるユナイテッド面々は、6日後のFAカップファイナルにおいても振るわず、エバートンに0-1で惜敗。7シーズンぶりの無冠という、まさかの屈辱を味わったのだった。
 

 

プレミア優勝を逃し、6日後のFAカップでもエバートンに完封負け……。まさかの連敗で沈痛な面持ちを浮かべたのは、低調なシーズンを送ったギグスだ。 (C) Getty Images

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監督:アレックス・ファーガソン(スコットランド)
その他の主なプレーヤー:GK ウォルシュ、DF メイ、P・ネビル、MF シャープ、ベッカム、バット、スコールズ、FW カントナ、コール

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◎1994-95シーズン成績
リーグ:2位(26勝10分け6敗・77得点26失点)
FAカップ:準優勝(対エバートン)
リーグカップ(コカコーラカップ):3回戦敗退(対ニューカッスル)
チャンピオンズ・リーグ:グループステージ敗退
 
チーム内得点ランキング(プレミアリーグ):カンチェルスキス(14点)、コール(12点)、カントナ(12点)、ヒューズ(8点)、マクレア(5点)、インス(5点)、スコールズ(5点)、シャープ(3点)、キーン(2点)、ブルース(1点)、アーウィン(2点)、パリスター(2点)、メイ(2点)、ギグス(1点)、バット(1点)
 
◎主なトランスファー
◇IN
DF メイ(←ブラックバーン)
DF P・ネビル(←ユースから昇格)
FW コール(←ニューカッスル)
 
◇OUT
DF ブラックモア(→ブラックバーン)
MF ロブソン(→ミドルスブラ※)
MF サベージ(→クルーアレクサンドラ=2部)
FW ダブリン(→ニューカッスル)
※選手兼任監督に就任
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