ヨシップ・スタニシッチはバイエルンの中で最も過小評価されている選手のひとりかもしれない。

　バイエルンが国立競技場でマンチェスター・シティと激突した26日の『Audi Football Summit powered by docomo』。その後半頭から出場した23歳のクロアチア代表DFは、2CBの一角として印象的なパフォーマンスを見せた。やはり後半からピッチに立ったFWで、自身とマッチアップしたアーリング・ハーランドにゴールを許さなかったのだ。

　もちろん、今回の一戦はタイトルや勝点とは無縁のプレシーズンマッチ。とはいえ相手は23日の横浜F・マリノス戦で２ゴールを決めている怪物ストライカーであり、２CBのパートナーはセカンドチーム所属の19歳であるアントニオ・ティクビッチと簡単ではないシチュエーションだった。それでもスタニシッチは淡々と自身のタスクを遂行し、結果としてハーランドを封じてみせたのだ。

　ナポリから移籍金5000万ユーロで加入したキム・ミンジェ、加入１年目にDF陣の柱となったマタイス・デ・リフト、あるいはフランス代表のバンジャマン・パバール、ダヨ・ウパメカノといったCBに注目が集まりがちだが、バイエルンはこの23歳にもっと大きな信頼を与えてもいいのではないか。本職の右サイドバックとしてだけでなく、CBの貴重な戦力としても、だ。

　そう声を大にしたくなるのは、スタニシッチが昨シーズンのチャンピオンズリーグ（ラウンド・オブ16第２レグ）でキリアン・エムバペをシャットアウトしたDFでもあるからだ。今回のマンＣ戦とは違い、あのときのパリ・サンジェルマン戦はCL８強入りが懸かった「本番」も「本番」だった。彼の守備、とりわけ１対１の対応は素晴らしかった。

【動画】マカティーが詰めたシティの先制点！

　マンＣ戦後のミックスゾーン――。エムバペに続き、ハーランドを止めた男が、だれに止められるわけでもなく、チームバスの方へ向かっている。「…止めるのは、自分しかいない」。謎の使命感に駆られた筆者は、23歳の俊英を直撃した。「あのPSG戦について聞かせてください。エムバペを見事に封じた試合です。覚えていますか？」と。

　すると、23歳の俊英は真剣な表情で丁寧に言葉を紡いでくれた。

「彼のような選手とやるのはいつだって難しいよ。あの日が僕にとってすごく良い日だったのは確かさ。１対１が多くて、すごく良い試合をしたと思う。でも、それは僕だけじゃなく、僕たち全員にとってもなんだ。（エムバペを止められたのは）チーム全員の努力があればこそだよ」

　この日の「ハーランド封じ」を訊ねても、おそらく答えは同様だろう。この利他的なメンタリティ、謙虚さが、あるいはチーム内でのアピール不足になっていないか心配したくもなる。

　繰り返すが、マンＣ戦はプレシーズンマッチ。ただ、かつてバイエルンに現われた19歳の新鋭は名手アレッサンドロ・ネスタを手玉に取ったミランとのプレシーズンマッチをきっかけに、一気にスターダムにのし上がった。そう、あの頃のトーマス・ミュラーのように、スタニシッチが来る2023－24シーズンに大きな飛躍を遂げても不思議はないはずだ。

　少なくともリーグ戦10試合かそこらの出番に留っていい才能ではない（22－23は14試合、21－22試合は13試合に出場）。23歳の飛躍、バイエルンの抜擢に期待したい。

取材・文●遠藤孝輔（ワールドサッカーダイジェスト編集部）

「韓国では強盗、日本では天使」来日中C・ロナウドの“神対応”を韓メディアが痛烈皮肉「全く違う姿を見せた」

「出ぇへんのかい」「空気を読んで欲しい」ネイマール＆エムバペ欠場で０－０。高額チケットで観戦したファンの率直な意見は？ 意外にも...

「結構ショック」「人として好きじゃない」エムバペの来日メンバー除外を日本のファンはどう感じた？ 「一番見たかったのに」