どのゾーンでもやるべきことを弁えている
御大ヨハン・クライフは現役時代、「トータルフットボール」という理念を用いて戦いの変幻を説き、なおかつ高い次元で実践した。彼自身、ポジションを持たず、自在に適時に場所を変え、そこで適切な判断をし、プレーを活発に動かし、スペクタクルを作った。彼の周りもその理念を生かした選手たちで、集団となって流動的に形を変え、無敵の強さを生み出した。
それは一つの伝説だ。
クライフは監督としても、アヤックス、FCバルセロナで歴史を作っている。「ドリームチーム」は世界中のサッカーファンを魅了した。今も、バルサの土台となっている。
「兵をあらわすの極みは、無形に至る」
兵法書「孫子」の一節である。いかに軍を敷き、どう動かすか、その究極は無形だという。そうすることで、何を探られても、読み取ることはできないし、推し量って対応もできない。どこまでも敵の態勢に従って、動けることで、優位を保てる。
一面的には、相手ありき、のように読めるが、相手の動きを察知し、自らが戦いの形を変える臨機応変は「先手」と言える。戦いが起こる前には予測ができている。「兵の形は水に象る」という言葉もあるが、水が流れる如く自然に動くことで、相手より先んじられる。
サッカーの場合、それはボールを握り、つなぎ、運び、仕掛ける、という繰り返しで、どこに人が集まり、どのようなタイミングで攻めればいいのか。その動きの変幻、無形に通じる。それを丹念なトレーニングで鍛え上げるしかない。
それは一つの伝説だ。
クライフは監督としても、アヤックス、FCバルセロナで歴史を作っている。「ドリームチーム」は世界中のサッカーファンを魅了した。今も、バルサの土台となっている。
「兵をあらわすの極みは、無形に至る」
兵法書「孫子」の一節である。いかに軍を敷き、どう動かすか、その究極は無形だという。そうすることで、何を探られても、読み取ることはできないし、推し量って対応もできない。どこまでも敵の態勢に従って、動けることで、優位を保てる。
一面的には、相手ありき、のように読めるが、相手の動きを察知し、自らが戦いの形を変える臨機応変は「先手」と言える。戦いが起こる前には予測ができている。「兵の形は水に象る」という言葉もあるが、水が流れる如く自然に動くことで、相手より先んじられる。
サッカーの場合、それはボールを握り、つなぎ、運び、仕掛ける、という繰り返しで、どこに人が集まり、どのようなタイミングで攻めればいいのか。その動きの変幻、無形に通じる。それを丹念なトレーニングで鍛え上げるしかない。
ベティス、アヤックス、スポルティング、そしてJリーグでは川崎フロンターレなどが、それを継続的に踏襲している。ボールゲームが基本にあることで、多くの選手はポリバレントで、どのゾーンでもやるべきことを弁えている。テクニックと同時に戦術的インテリジェンスを磨かれる。
もっとも、動きが出ることで乱れも生じる。どれだけ連携を高め、ボールプレーの練度を上げても、ミスは生じる。つまり、相手のミスを待つような戦いの作法もあるのだ。
「善く敵を動かすものは」
その一節で始まる孫子の教えでは、敵をわざと動かし、そこにある隙を突くものだろう。
水のように軽やかに動いて相手を翻弄しようとすると、必ず乱れが出る。ボールを持って、速い動きを重ねるのは、それだけでリスクと言える。隙をさらけ出すようなものなのだ。
やはりサッカーの本質に迫るには、相当な技術、戦術の鍛錬が必要だし、そもそも戦力次第で、断念せざるを得ないところもあるだろう。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
もっとも、動きが出ることで乱れも生じる。どれだけ連携を高め、ボールプレーの練度を上げても、ミスは生じる。つまり、相手のミスを待つような戦いの作法もあるのだ。
「善く敵を動かすものは」
その一節で始まる孫子の教えでは、敵をわざと動かし、そこにある隙を突くものだろう。
水のように軽やかに動いて相手を翻弄しようとすると、必ず乱れが出る。ボールを持って、速い動きを重ねるのは、それだけでリスクと言える。隙をさらけ出すようなものなのだ。
やはりサッカーの本質に迫るには、相当な技術、戦術の鍛錬が必要だし、そもそも戦力次第で、断念せざるを得ないところもあるだろう。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。